研究課題/領域番号 |
19J20167
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
SUN RONGYAN 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマCVM / エタノール添加 / 安定なグロー放電 / 反応生成物再堆積 |
研究実績の概要 |
1.現在まで、水晶ウエハに対するプラズマCVM加工においては、大気圧下で容易にプラズマを発生できるHeガスをキャリアガスとして使用してきた。プロセスガスとしてCF4を使用するが、反応ガス中に少量のエタノールを添加すると、安定なCF4含有Ar大気圧プラズマの発生に成功した。しかしながら、エタノールから分解したC系生成物は水晶ウエハ表面に堆積して、エッチングプロセスを抑制した。対策として、プロセスガスにO2を添加することにより、C系堆積物をCO2などの揮発性生成物に変え、堆積物の形成を防止することで、エッチングプロセスが促進された。CF4、O2、エタノールの流量、加工ギャップ等を調整し、安定なプラズマが発生できかつ水晶ウエハに双晶が発生しない最適加工条件を見出した。従来のHeをキャリアガスとして使用した場合と比較して、同条件でArをキャリアガスとして使用すると、同等のエッチングレートが得られることが確認できた。 2.昨年度の先行研究では、SiCとSiの2成分から構成される反応焼結SiC材のプラズマCVMエッチングにおいて、成分毎のエッチングレートの違いにより表面粗さが悪化することを抑制できる反応ガス組成を見出した。得られた最適ガス組成を用いて、局所プラズマの滞在時間制御により反応焼結SiC材に対して非球面形状を創成した。実際の加工後形状の直径は目標と一致したが、深さは目標より浅かった。部分的に浅いのではなく、数値制御加工後の形状と目標形状は約0.6倍の比例関係にあることがわかった。加工後の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、エネルギー分散型X線分析により表面元素を測定したところ、F系の反応生成物が表面に堆積し、次のエッチング反応を抑制したため、全体の加工量が目標より少なくなったことがわかった。今後、反応生成物の再堆積の抑制方法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度において、プラズマCVM法では、反応ガス中に少量のエタノールを添加することにより、従来のHeをキャリアガスとして使用した場合と比較して、同条件でArをキャリアガスとして使用すると、同等のエッチングレートが得られることが確認できた。高価なHeガスを安価なArガスへ代えることにより、エッチングレートが変わらずに、ガスコストを抑えることを可能とし、工業的に有用であることを示した。そして、プラズマCVMを用いてRS-SiCの非球面形状加工を行った。反応生成物が表面に堆積し、次のエッチング反応を抑制したため、全体の加工量が目標より少なくなったことがわかった。また、プラズマ援用研磨法をセラミックスAlN材への応用を検討した。PAPプロセスの有効性を実証するため、CF4プラズマ照射によるAlNの表面改質を行った。改質後の表面の組成をXPSで測定した結果、軟質なAlF3改質層の形成が確認された。#20000番ダイヤモンド砥石(粒径φ0.25 μm)を用いて2時間のPAP加工を行った。走査型白色顕微干渉計(SWLI)像から得られたPAP前後のAlNの表面粗さを比較すると、3.15 mm × 3.15 mmの測定範囲で表面粗さSaが491 nmから33 nmまで減少した。研磨痕の段差から算出したPAPの研磨レートは約500 nm/hであり、プラズマ照射無しの場合と比較して約2倍大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.RS-SiCの非球面形状創成に対して、反応生成物の再堆積の抑制方法を検討し、RS-SiCを素材とした形状創成において形状精度0.01 μmを達成する。 2.プラズマ援用研磨法を用いたRS-SiCの研磨における最適研磨条件の探索。RS-SiCは、SiCと未反応の残留Siの2つの成分から構成される。iC成分とSi成分の酸化レートが異なると、同じプラズマ照射時間で生成した酸化膜の厚さは異なる。したがって、SiC成分とSi成分の酸化レートが等しくなる条件を探索する必要がある。さらに、各種反応ガス組成を適用してPAP加工をしたRS-SiCの表面粗さを評価し、ダメージフリーに二乗平均平方根粗さが1 nm以下を達成する加工システムの構築と加工条件の最適化を図る。 3.今年度AlNセラミックス材に対するPAP法の応用を提案し、研磨における脱粒現象が抑制される等、PAP法の有用性を確認した。今後は下部回転テーブル、上部回転ヘッドの回転数の増加、荷重の増加、砥石材質の変更を行い、研磨条件の最適化をおこなう。
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