研究課題/領域番号 |
19J20173
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
豊島 理公 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | Loneliness / Social needs / Social isolation / Social motivation / Social preference / Social exploration behavior / Cage-mates / Rats |
研究実績の概要 |
ラットを用いて「孤独感」を評価するため,実験個体をケージメイトから隔離し,その24時間後に3チャンバー社会的選好テストを実施した。 3チャンバー社会的選好テストでは,3つのチャンバーから成る装置の両端のチャンバーにケージメイトと今まで出会ったことのない未知の同種他個体を円筒の中に入れて呈示し,実験個体に装置内を10分間自由に探索させた。刺激個体の週齢や性別は実験個体と一致していた。隔離処置を行った実験個体12匹と統制群の実験個体12匹,刺激個体として12匹の合わせて36匹を用いた。その結果,統制群のラットは刺激個体として呈示されたケージメイトと比べて未知の他個体刺激に対してより長く探索行動を示した。一方で,テストの約24時間前にケージメイトと引き離され個別に飼育されたラットは,ケージメイトと未知個体を同程度探索した。また,統制群と実験群の社会的探索時間を比較したところ,実験群の方がケージメイトに対しての探索時間および総探索時間が長かったが,未知個体に対しては有意差がみられなかった。このことから,短期的な社会的隔離はケージメイトに対して接触しようという動機づけを高めることによってラットが生得的に有する社会的選好性を変化させることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3チャンバー社会的選好テストを実施し,社会的動機づけに対する隔離処置の影響について明らかにする行動実験系を確立した。当初の仮説通り,隔離処置によって社会的選好性に変化が生じ,社会的交流の時間が増加することを示せたほか,社会的動機づけに対する隔離処置の影響には個体間でバラつきがみられることも明らかにできた。そのため,申請書に記載した翌年度以降の計画に沿って滞りなく実験が実施できると考えている。来年度は隔離処置による異常な社会的動機づけの根底にある神経システムについて検討し,「孤独感」の感じやすさと脳内活動レベルとの関連に迫る。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「孤独感」の神経基盤と「孤独感」の感じやすさに寄与する要因について検討する。 まず,来年度は「孤独感」を生起させる神経メカニズムについてを探り,孤独の感受性の程度と神経活動レベルとの関連についても調べる。隔離処置ラットにおいて社会的交流中に活動する脳領域をc-Fos免疫組織化学染色法を用いて調べ,「孤独感」に関わる脳領域を特定する。また,その脳領域の活動レベルが「孤独感」の感じやすさと関連するのか確かめるため,c-Fos陽性細胞数(脳活動レベルを反映)と社会的交流に従事した時間(「孤独感」の程度を反映)の相関分析を行う。さらに,特定した関連脳領域を薬理遺伝学的に操作して,隔離処置ラットの社会的選好性に影響を及ぼすのか検討する。 また,再来年度は「孤独感」の感じやすさと性差や集団サイズなどの影響を検討する予定である。
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