研究実績の概要 |
採用期間中の研究目的は、潜在クラス分析で類型化したナショナリズムの形成過程を明らかにすることにある。そのため、第一に、ナショナリズムの一般的な形成・変化メカニズムについて検討する必要がある。その研究について、昨年度行った学生を対象としたサーベイ実験の内容をより発展させ「関西社会学会」にて報告した。さらに、今年度は、より一般的な標本を得るために3月にウェブサーベイ実験を行った。第二に、ナショナリズムを類型化し、現代日本においてリベラルナショナリズムを持つ人々がいるのか検討した論文が『ソシオロジ』に掲載された。第三に、上記の論文での成果に基づきナショナリズムの形成の要因として、自らの生活への経済的、社会関係的認知に着目した論文を進めている最中である。第四に、ナショナリズムを含む様々な価値意識と大学での専攻分野の関係を扱った論文が『ソシオロゴス』に掲載された。第五に、インターネットやメディアでの活動とナショナリズムの類型の関係についての論文を投稿し現在審査を受けている段階である。第六に、現在投稿中の論文で用いた二重過程理論について広くレビューし、ナショナリズム論だけではなく、社会学一般の行為理論へのインプリケーションを検討した研究を「数理社会学会」にて報告した。第七に、リベラル・ナショナリズム論と関わるエスニシティや多文化主義といった周辺分野において影響力を持つスーパーダイバーシティに関する著名な論文(Vertovec, S. ,2007, “Super-diversity and its implications,”Ethnic and racial studies, 30(6), 1024-1054.)を翻訳し、『理論と動態』に掲載された。
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