低環境負荷なフレキシブル基板材料として木材由来の透明な紙「ナノペーパー」が注目を集めているが、紙基板の多層化、立体化及び信頼性に関する知見は不足している。本年度は昨年度明らかとなったナノペーパーコーティングによる水濡れ時の短絡抑制メカニズムを精査し、新規ナノペーパー内部構造制御及び立体成型技術としての応用可能性を検証した。2020年度においては、ナノペーパーコーティングによる水濡れ時の電子機器信頼性向上技術の開発に成功している。本年度は短絡抑制メカニズムの応用として、陽極上にセルロースナノファイバーが電気泳動的/電気化学的に堆積する現象に着目し、内部構造制御技術としての可能性を検証した。セルロースナノファイバー/水分散液に陰極・陽極となる電極を挿入し電極間に直流電圧を印加すると、陽極上にセルロースナノファイバーが堆積しハイドロゲルを形成する。この時、ハイドロゲル内部におけるセルロースナノファイバーの配向状態が、各種パラメータによって水平/ランダム/垂直配向へと大きく変化することを発見した。配向状態の変化は、偏光板による光学的観察、超臨界乾燥によるハイドロゲルのエアロゲル化及びエアロゲル断面のFE-SEM観察、エアロゲルに対する透過型X線回折測定によって確認された。乾燥収縮にも異方性が表れており、水平配向ハイドロゲルは乾燥時に陽極に対して水平な板状に、垂直配向ハイドロゲルは乾燥時に陽極に対して垂直な棒状に乾燥した。異方的な乾燥収縮現象を利用して、立体形状ナノペーパー(紙基板)の作製を行った。立体電極に対して水平配向でセルロースナノファイバーを堆積させ、乾燥し、その後電極を取り除くことで、複雑な立体形状のナノペーパーを作製することに成功した。得られた知見は、回路基板だけにとどまらない幅広い分野への応用が期待できる。
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