研究課題
Fe/N/C触媒は触媒前駆体である鉄と窒素源をカーボンに担持、焼成によって調製される炭素材料であり、酸素還元反応(ORR)に対して高い活性を示すことから、固体高分子形燃料電池のカソード触媒としての利用が期待されている。焼成時には、触媒前駆体のグラファイト化が進行し、活性サイトであるFe-Nx構造が構築される。しかし同時に鉄が凝集し、低活性な鉄粒子も形成される点が課題であった。本研究では、触媒前駆体の化学構造に着目し、Fe-Nx構造をより精密に構築することにでFe/N/C触媒の活性向上をめざしている。これまでに、焼成時におけるグラフェイト化の進行を考慮して設計した、ブロモ基とピリジル基を有するテトラフェニルジアザトリフェニレンを配位子とする鉄錯体([Fe(pBr2TDATPy)2]2+)を触媒前駆体に利用することで、課題であった鉄粒子形成の抑制と、Fe-Nx 構造の効率的構築を達成した。さらに電気化学測定の結果、[Fe(p-Br2TDATPy)2]2+ から調製した Fe/N/C 触媒が優れた ORR 活性を示すことを明らかにした。本年度は、本触媒の構造に関して詳細な知見を得るために、種々の電子顕微鏡観察およびX線分光実験を実施した。まず、STEM-EELS観察の結果、触媒上に鉄粒子の存在は認められず、鉄が原子サイズで分散していることが明らかとなった。また、電解条件下におけるX線吸収微細構造(in-situ XAFS)解析の結果、鉄原子は4つの窒素原子が配位したFe-N4構造を形成していることを明らかにした。以上の結果から、設計した鉄錯体を前駆体に利用することで、活性サイトであるFe-N4構造の精密構築が達成されることを実証した。本手法は、均一な触媒サイト有する Fe/N/C 触媒を調製する新たなアプローチであり、得られた知見は今後の更なる触媒開発に寄与するものである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
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