今後の研究の推進方策 |
昨年度まは研究計画を概ね遂行したため、今年度は当初の予定通り計画を遂行する予定であった。ところが、COVID-19の影響により 現地へ調査旅行ができなくなった。このため当初の予定を変更し以下のような研究を行う: (1)既存のデータを用いた研究, (2)Webでデータ収集が可能な研究。また、COVID-19の影響が十分に減じたと判断された場合、従来の計画を遂行する。 (1)伊仙方言の言語データ(辞書、コーパス)は、管見の限り申請者がこれまで収集したものの他には目立って大部のものは無い。しかし、島内の他方言についてはデータを入手することができる。例えば、天城町浅間方言に関して『徳之島方言二千文辞典』(岡村隆博編著, 2009, 徳之島方言の会)や、徳之島町尾母方言に関して『徳之島尾母方言集 』(徳富重成編, 1975)など。これらの資料を用いて、徳之島の方言全般に関して多量のデータから傾向を探る。具体的には、主格助詞の出現環境の探求と、音声出現頻度の分析を行う。主格助詞はこれまで加藤幹治(2019)「徳之島伊仙方言の主格(対格)標示における諸問題」などで扱ってきた問題であり、コーパス研究という新たな手法を用いて未解決の問題に挑む。音素頻度の分析は沢木元栄(2 014)『徳之島方言の音節頻度表から何が分かるか』信州大学人文科学論集 (1), 75-82.などが扱っているが本研究ではこれに対し音韻類型論の立場からの分析を加える。 (2)Web通話サービスを用いて言語データの収集を行う。本来の今年度の研究計画の一部をこれにより遂行する。具体的には、語彙収集と統語 論の調査を行う。申請者自身の研も含めこれまでの徳之島方言の研究では統語論はあまり記述されなかったが、本年度は未記述の文法項目に注目して調査を行う。
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