研究課題/領域番号 |
19J20371
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
彦坂 幹斗 中京大学, 体育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 経頭蓋直流電気刺激 / tDCS / 一次運動野 / 前頭前野 / 持久的運動能力 |
研究実績の概要 |
経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)は、脳に微弱な電流を流すことで、刺激部位の興奮性を変化させる。今までの研究では、tDCSを身体運動の発現を司る一次運動野または、身体運動の計画を司る前頭前野に与えることによって、持久的運動能力が向上することが確認されている。これらの脳領域は、自らの意志による運動、すなわち随意運動を発現させる神経機構において、低次と高次の階層性を形成している。従って、低次の一次運動野へのtDCSでも、高次の前頭前野へのtDCSでも同様に、持久的運動能力を向上させる効果が確認されたと考えられる。そこで、一次運動野と前頭前野の両方に同時に、tDCSを与えた場合、更なる刺激効果が得られるのではないかという仮説に基づき実験を行った。その結果、一次運動野と前頭前野の2カ所への同時tDCSは、自転車ペダリングの持久的運動能力を増強させなかった。しかしながら、一部の実験参加者には、tDCSによる運動持続時間の延長が確認された。これらの結果は、tDCSが持久的運動能力に与える影響には、個人によって効果にバラつきがあることを示している。最終的に、1)運動ネットワークの活性はすでに上限に達していたという天井効果、2)研究対象者がアスリートであったこと、3)tDCSへの刺激応答の個人差、4)運動課題内に内在するパフォーマンス誤差、という4つの観点から刺激効果が得られなかった可能性について追及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、随意運動発現機構の階層性を考慮したtDCSがアスリートの持久的運動能力を向上させるかどうか検証した。この研究では、tDCSによる運動能力の顕著な向上は確認することが出来なかった。しかしながら、この要因を追及することでネガティブデータとして研究報告を行った。ネガティブな結果は、ポジティブな結果がでた研究と比べて公表されにくいという出版バイアスは、エビデンスを歪める要因となり得る。そのため、このような研究報告は評価に値する。従って、今年度の研究は、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、tDCSの刺激電極を左右対称の脳部位に固定して刺激するdual tDCSが運動能力にどのような影響を与えるか明らかにすることを目標とする。左右の大脳半球は神経線維を介して接続しており、ネットワークを形成している。dual tDCSは、このネットワーク的な活動を変化させることが予想される。まずは、左右の一次運動野へのdual tDCSがどのような運動に影響を与えるのか調査する。また、様々な刺激パラメータと運動課題を検討することで、dual tDCSの刺激効果について調べる。
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