2021年度は、2020年度に行った「脳を非侵襲的に刺激する手法が両手同時の筋力発揮にどのような影響を与えるか」という研究の取りまとめを行った。その結果、左の運動野の活動を高め、右の運動野の活動を抑えるような刺激を与えることで、両手同時の握力が促通することを明らかにした。これらの結果は、左脳を陽極、右脳を陰極で電気刺激すると、片手運動でも両手運動でも、筋力発揮をしやすい脳状態になる可能性を示している。これらの研究成果は、国際誌への論文発表、国内での学会発表を行った。この実験から得られた左脳と右脳では片手運動と両手運動において異なる運動制御を行っているという仮説を検証するために、「片手だけで筋力発揮する片手握力で生じた疲労が両手同時に筋力発揮する両手握力に与える影響」について調査する実験を行い、その研究成果を取りまとめた。その結果、右手だけ筋力発揮する右片手握力を疲労させた場合、右片手握力は平均で7kg低下した一方で、両手同時に筋力発揮する右両手握力は平均で5kgしか低下していなかった。すなわち、片手での運動に疲れた場合、両手での運動に切り替えることで、筋力発揮が促通する可能性があり、スポーツトレーニングやリハビリテーションへの応用可能性を示している。例えば、右手の片手筋力発揮を事前に疲労させることで、両手同時の筋力発揮が求められるボートのローイングやウエイトリフティング、脳卒中や脊髄損傷による麻痺手を有する患者の両手運動を促通させるような手法として活用することができる可能性を示している。これらの研究成果は、国際誌への論文発表、国内での学会発表を行った。
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