採用最終年にあたる今年度は、各所蔵機関での史料調査を継続して行うとともに、これまでの研究成果の学会報告・論文投稿を重点的に行った。具体的に実施した研究内容は下記の通りである。 (1)採用一年目に大阪歴史学会近世史部会で口頭報告を行った、近世天皇の葬送儀礼・中陰法要の執行体制の成立と近世中後期にかけての展開を検討した論文を『ヒストリア』287号(2021年8月)に発表した。関連して、採用二年目に畿内近国史研究会で口頭報告を行った、近世天皇・女院の葬送儀礼の一場面である「宝龕御用」に関与する天台宗寺門派門跡の動向を具体的に検討した論文が『歴史学研究』に採用された(2022年中に掲載予定)。 (2)近世天皇家の追善仏事をめぐる泉涌寺・般舟院の地位の変遷について検討し、大阪歴史科学協議会前近代史部会、朝幕研究会にて口頭報告を行った。以上の内容は研究ノートとして学術雑誌へ投稿した結果採用され、『日本研究』第65集(2022年9月)に掲載予定である。関連して、近世天皇家の宮中法会の特質・変遷とそれに関与する寺院・門跡の動向について検討し、日本史研究会近世史部会にて口頭報告を行い、学術雑誌に論文投稿を行った。 (3)採用二年目に近世史フォーラム例会で口頭報告を行った、仁孝天皇在位期の文政~弘化期の朝廷における皇位継承・天皇と女院の母子関係の問題を素材に女院新清和院の地位を検討した論文を『史林』105-2号(2022年3月)に発表した。 (4)江戸時代に皇位継承問題をきっかけに生じた御霊信仰をめぐる問題を検討し、畿内近国史研究会にて口頭報告を行い、学術雑誌に論文投稿を行った。 (5)近世後期~幕末期の天皇家祖先祭祀と皇位継承問題について、史料の調査・分析を進めた。今後学会での口頭報告を視野に内容をまとめていく予定である。
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