研究課題/領域番号 |
19J20402
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
陳 彦如 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | 天目 / 陶磁器 / 編年 |
研究実績の概要 |
令和2年度当初の計画では、(1)中世京都の天目編年を補うために、福岡県博多遺跡群・沖縄県琉球首里城跡等天目の出土が豊富な国内遺跡を調査し、さらに国外でも調査を展開する(2)国内外で天目の窯跡を訪問・調査することを予定していた。しかし、新型コロナウイルスの影響で当初の計画通りに研究を順調に展開できなかった。 そのため、主に京都の出土資料と史料整理を中心に研究を進めつつ、天目を中心とした陶磁器遺物を三次元モデルとして作成する可能を模索した。具体的に実施した作業と研究成果は以下のとおりである。 ①京都における近世国産天目の出土事例に関する情報をとりまとめ、その中の一部を実見・実測した。その結果、中世天目が茶の湯に使われた一方で、近世天目は煎茶と密接に関連して器形変化したと考えられた。 ②制作年代が明確な中国の史料及び絵画の中に登場する茶道具について、茶筅・茶匙・天目を中心に事例集成し、中国における喫茶文化の変遷を追いかけた。『茶録』や『大観茶論』などよく注目される茶書のほかに、明代初期の皇室では点茶は廃れることなく、嗜まれていたことを示唆する史料に着目し、点茶から淹茶へ転換する時期の中国喫茶文化像を補うことができると考える。 ③天目の出土品から三次元モデルを作成する方法を模索した。三次元レーザー測定及びSfM(Structure from Motion )写真測量の原理では、黒色または光沢を持つものが適切にスキャンできないことが多い。そのため、黒釉が掛かっている天目の三次元モデル化はこれまで非常に困難だとされてきた。しかし、国内機関の協力を得て試行錯誤を重ねた結果、三次元レーザー測定及びSfM写真測量による天目の三次元モデル化に成功した。ただし、現段階ではまだ汎用性に欠けているため、今後測定方法のさらなる改善を行う予定である。 これらの成果については令和3年に論文として公開を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、国内外の調査ともに実施が困難である事情が発生した。特に当初計画にあった海外調査は諦めざるをえなかった。そのため、令和3年度の研究計画にあった史料整理の一部を繰り上げて実施した。新型コロナウイルスの影響で実施できなかった資料調査については、国内外の情勢に基づいて令和3年度内に実施すると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年当初の計画では、(1)中近世日本における全国的な天目の消費動向を把握するために、近世遺跡が集中する東京・大阪の出土品を中心に、それぞれ1ヶ月程の資料調査を行う。さらに、伝世品についても、東京国立博物館・出光美術館・京都国立博物館・大阪市立東洋陶磁美術館・徳川美術館等を1ヶ所2日程かけて調査を行う。(2)日本国内出土天目の産地を特定するために、国産品の主要な供給地と目される長崎県有田町と佐賀県唐津市の窯跡出土品を1ヶ月程、前年度未調査の福建省の窯跡出土品を3週間程かけて調査する。これまでの調査結果に基づき、天目からみた宋風喫茶文化の受容と変遷というテーマに沿って博士論文をまとめるとの予定となっている。 しかし、現在令和2年資料調査の計画がやや遅れているため、令和3年では令和2年の資料調査を推進しながら、令和3年の計画を同時に進める予定である。
|