研究課題/領域番号 |
19J20450
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木下 悟 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞膜プロトンポンプ / 光合成 / 糖代謝 / シグナル伝達 / リン酸化 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
細胞膜プロトンポンプは細胞外へプロトン(H+)を能動輸送する酵素である。プロトンの細胞外への輸送が細胞外を酸性化し、加えて、細胞膜に存在する栄養物質輸送体のプロトン共役型輸送を支えている。そのため、細胞膜プロトンポンプは植物細胞の伸長や栄養などの物質輸送に必須の酵素である。
細胞膜プロトンポンプは特定の環境刺激(i.e. 青色光、オーキシンetc.)から始まるシグナル伝達を通して活性化されることが過去の研究で知られている。葉では、光合成で産生されたショ糖が細胞膜プロトンポンプを活性化することが当研究室の近年の研究によって新たに示されている。植物は太陽光を受け光合成を行うことでショ糖などのエネルギー資源を産生しているが、ショ糖から始まるシグナル伝達は、その複雑な糖代謝との関係から未解明な部分が多い。そのため、本研究は光合成糖依存的な細胞膜プロトンポンプ活性化が、どのようなシグナル伝達を経由しているのか、また、葉で細胞膜プロトンポンプが活性化されることにどのような生理的意義があるのかを解明すべき疑問としている。これら2つの疑問を解明することで、植物の新たな生理応答機構を明らかにする。
2019年度はシロイヌナズナの細胞膜プロトンポンプが糖によって活性化される様式を詳しく調べ、シグナル経路の絞り込みと今後の実験材料などを用意した。生理的意義に関しても文献調査による作業仮説の設定と実験手法の確立を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は1)「光合成に依存した細胞膜プロトンポンプの活性化機構の解明」と2)「葉肉細胞での細胞膜プロトンポンプの活性化の生理的意義の探索」に関して、計画していた通りの進展が見られため。具体的な進捗を以下に記す。
1) 光合成糖に応答した細胞膜プロトンポンプの活性化の様式をウェスターンブロットによって検証し、活性化を引き起こす糖の種類や応答時間を明らかにすることができた。また、順遺伝学スクリーニングのための新たな変異プールを作成し、一次スクリーニング方法について検証した。
2) 光合成に依存的な細胞膜プロトンポンプの活性化の現象と同じように光合成に依存して活性化される酵素の文献調査を進め、葉肉細胞での細胞膜プロトンポンプの活性化の生理的意義に関する作業仮説を立てることができた。そこで、2019年度は作業仮説検証のための準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究により、光合成糖の種類や応答時間が明らかになってきたため、今後は糖から細胞膜プロトンポンプまでシグナルを伝達している因子の探索を積極的に行っていきたい。また、生理的意義についても葉での細胞膜プロトンポンプ活性化が葉肉細胞内への物質輸送に正に寄与していると考え、無機栄養吸収や光合成そのものに与える影響を検証していきたい。
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