研究課題/領域番号 |
19J20495
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
渡邊 孝之介 横浜国立大学, 理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 固体高分子形水電解 / 酸素気泡 / 気液二相流 / 過飽和 |
研究実績の概要 |
液体燃料を直接電気エネルギーに変換可能な燃料電池である直接形燃料電池は,エネルギー輸送・貯蔵の観点から注目されている.また,再生可能エネルギーを直接水素に変換可能な固体高分子形水電解や気体の水素をトルエンと反応させて貯蔵・輸送が容易な有機化合物であるメチルシクロヘキサンなどに変換する有機ハイドライド技術なども注目されている.これらのエネルギーデバイスでは,構成部材の一つである多孔質拡散層内部が供給された液体と発生した気体の気液二相流となっている.本研究では,さらなる性能向上に不可欠な多孔質内気液二相流の流動様式を解明する. 本年度は,新型コロナウイルス感染症の影響により,4月から7月まで大学構内への学生の入構が禁止され,3次元X線CT装置やスパッタ装置など学内の設備を用いた実験が長期間できず,当初計画していた小型薄膜気泡センサの作成が困難になった. そこで,学外でも実施可能な数値解析による調査に切り替えて研究を実施した.特に,固体高分子形水電解装置に着目し,マルチフィジックスシミュレーションソフトウェアのCOMSOL Multiphysicsを用いて水電解装置の電気化学モデルを作成し,電解質内部の電位分布を調査した. 固体高分子形水電解装置では,アノードとカソード両極の電極(触媒)が正対して配置されているのが一般的であり,その際の電解質内部の電位分布は両極に対して対称的になっているため,電極周囲に設置された参照極を用いても電解質の中央部の電位を測定することしか出来ない.しかし,両極の電極を意図的にずらして配置することによって,電解質内部の電位分布には偏りが生じ,参照極の位置や電極をずらす量によって,電解質内部の任意の場所の電位を測定できるようになり,電解性能を考慮する際に必要な過電圧を詳細に分析する際などに役立つと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響による,学生の大学構内への入構禁止により,当初の計画であった小型薄膜気泡センサの作成が困難になったため,まず昨年度の研究成果である,ギ酸燃料電池における多孔質拡散層構造が気泡分布や発電性能に与える影響に関して,英語論文の執筆,国際誌への投稿を行った. また,学外でも研究可能な数値解析による研究に切り替えて研究を実施し,固体高分子形水電解装置の電解質内部の電位分布を調査した.得られた研究成果は,国内学会および国際学会において口頭発表を行った. さらに,大学構内での研究活動が再開した後は,数値解析に引き続き,固体高分子形水電解装置の発生酸素気泡の可視化に取り組んでいる. 以上の点から,今年度の進捗はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から,固体高分子形水電解装置の発生酸素は,初めから気泡として発生しているのではなく,まず供給された純水に酸素が溶解し,その後溶存酸素量が飽和状態となり,気泡となって発生している可能性,および溶存酸素によって電解時の損失となる濃度過電圧の増加を引き起こしている可能性が示唆される. 以上の点から,来年度は引き続き固体高分子形水電解装置の発生酸素気泡の可視化を行い,気泡の成長過程の観察を通して,過飽和溶存酸素の存在や濃度過電圧に与える影響を調査していく予定である.
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