液体燃料を直接電気エネルギーに変換可能な燃料電池である直接形燃料電池は,エネルギー輸送・貯蔵の観点から注目されている.また,再生可能エネルギーを利用して水素を製造可能な水電解や気体の水素をトルエンと反応させて貯蔵・輸送が容易な有機化合物であるメチルシクロヘキサンに変換する有機ハイドライド技術なども注目されている.これらのエネルギーデバイスでは,構成部材の一つである多孔質拡散層内部が供給された液体と発生した気体の気液二相流となっており,気液二相流によって反応物質の供給や生成物質の排出が妨げられる現象が発生し,性能低下が引き起こされている.本研究では,多孔質内気液二相流の流動様式を解明することで,エネルギーデバイスのさらなる性能向上を目指した. 本年度は,再生可能エネルギー由来の電力の特徴である大きな電力変動に対する耐久性が高い固体高分子形水電解装置を対象として研究を行った. 水電解中の固体高分子形水電解装置に関して,ハイスピードカメラを用いてアノードにおける供給された水と発生した酸素気泡の気液二相流の可視化調査を行った.この際,印加電圧や,水供給の有無といった条件を変更させながら可視化を行った. 可視化調査の結果,アノード触媒近傍で発生した酸素気泡に関してアノード触媒から離脱した後も,気泡のサイズが大きくなり続けることが明らかになった.以上の結果から,アノード触媒層近傍における溶存酸素過飽和領域の存在を明らかにした. 得られた知見は,固体高分子形水電解装置の出力向上に繋がる多孔質構造の設計に役立つと考えられる.
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