2020年度においては「電磁機器の低次元モデル生成」について新しい進展が見られた.従来,電磁機器の解析において変位電流を無視し,渦電流のみを考慮した解析が行われてきた.これは低周波数において金属中における変位電流が導電電流よりも無視できるほどに小さいことが近似の根拠とされてきた.しかしながら,近年の電磁機器の駆動周波数の高周波化にともない巻線間に存在する浮遊容量の影響が懸念されている.変位電流を考慮可能なfullマクスウェル方程式を電磁機器の駆動周波数帯で時間領域解析するためにはNewmarkβ法などがあるが,この手法には数値安定性の面で議論が残っている.また有限要素方程式のような大規模な方程式を時間ステップごとに何度も解くことは計算コストの観点からも望ましくない. そこで本年度は当初の計画にはなかったが,このような変位電流を含むマクスウェル方程式の低次元モデル生成に取り組んだ.渦電流と変位電流の両方を考慮するためにダーウィン近似と呼ばれる準定常近似のひとつを取り扱った.ダーウィン近似を適用する場合,有限要素方程式は非対称になるため,申請者らが提案したモデル低次元化法の適用が難しいことが判明した.この問題を解決するために,2020年9月に行われた電気学会静止器回転機合同研究会(オンライン)において新しい低次元化法を提案した.しかしながら,この提案した手法も低次元モデルの受動性が担保されず,低次元モデルの発散による不安定化が懸念された.そこで2021年2月に電気学会静止器回転機合同研究会(オンライン)にて時間領域解析における受動性の問題を解決するためのアーノルディ法を用いた低次元化法を提案した.これにより時間領域においても安定に解を得ることができることを示した. これらの結果は今後論文として成果をまとめて発表する予定である.
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