研究実績の概要 |
超重元素の原子, 分子, 固体状態の研究に向け, 昨年度までに開発した, 有限光速効果を考慮した相対論的な密度汎関数理論について構築した. また, 今後の相対論的な密度汎関数理論の開発にむけて, 密度汎関数理論の逆問題である, 密度から有効ポテンシャルを構築する手法 (逆コーン・シャム法) の拡張を行った. 先行研究では, 個々の物質にのみ適用可能な有効ポテンシャルしか得られていなかったが, 本手法では, 実験的または波動関数理論で得られた密度を用いて, 既存の密度汎関数を改善を可能にする. また, これらの手法をより精度良く計算するための計算コードの開発, 及び具体的に物理量を計算するための手法の開発を行った. 原子や固体などの電子系の密度汎関数理論を原子核の密度汎関数理論に応用する研究として, 核子が点電荷ではなく電荷分布を持つことの効果, および, 原子系では考慮されているが原子核系ではほとんど考慮されていない真空偏極による 効果を原子核の密度汎関数理論に取り込むことで, これらの影響が束縛エネルギーに無視できないことを確認した. また, 原子核がミュオンを捕獲する過程 (ミュオン捕獲過程) に対して, ミュオン波動関数に電子の影響を初めて考慮した. また, この手法を用いた, 医療用核種 99Tc のジェネレータである 99Mo の生成過程について詳細に解析を行った. 原子核における乱雑位相近似に対して ρ 中間子の影響を考慮する研究も中国・蘭州大学との共同研究で実施した.
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今後の研究の推進方策 |
測定可能な物理量を計算するための計算手法の開発を継続して行う. また, 計算コードの開発の完成を目標とし, 実際に通常の元素, 超重元素双方に対して具体的な物理量の計算ができるよう準備をすすめる.
また, 本手法を原子核構造計算にも引き続き応用し, 実際にクーロン力とアイソスピンを破る核力の競合について継続的に研究を行う.
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