研究課題/領域番号 |
19J20550
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安田 まり奈 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 細菌間コミュニケーション / シグナル物質 / 膜小胞 / ファージ |
研究実績の概要 |
水処理現場での課題である窒素除去効率の改善には、複合系における特定細菌のシグナル物質伝達を活性化し、細菌間コミュニケーションを制御することが重要となる。しかしながら、集団中の特定細菌のみのコミュニケーションを促進する手法は確立されていない。そこで本研究では、土壌脱窒細菌Paracoccus denitrificansを用い、複合系中の特定細菌のコミュニケーションを制御する方法の確立を目指す。 本研究では、細菌が自身の膜から産生する膜小胞が鍵となる。膜小胞の内部にはシグナル物質を含む細胞由来成分が豊富に存在する。また、膜小胞は細菌特異的に付着することが報告されていることから、複合系においても細菌特異的にシグナル物質を伝達させる可能性が見出された。 今年度は、シグナル物質の局在について詳細な解析を行った。最終培養液から細胞・膜小胞・培養上清に分画した後に酢酸エチルによってシグナル物質を抽出し、液体クロマトグラフィー質量分析法によって、各サンプルに含まれるシグナル物質濃度を測定した。膜小胞画分に含まれるシグナル物質を定量的に測定することで、膜小胞を用いたシグナル物質伝達によって活性化される細菌間コミュニケーションのレベルを予想することができる。 また、実際に細菌間コミュニケーションの活性度を評価する系の再構築にも取り組んだ。従来の蛍光レポーター系の蛍光は弱く、十分に細菌間コミュニケーションを評価することが困難であった。そこで、P. denitrificansにおける最適な蛍光タンパク質の選出を行った。その結果、緑色蛍光タンパク質mNeonGreenが最も適していることが分かったため、mNeonGreenを用いて細菌間コミュニケーションをモニタリングする蛍光レポータープラスミドの再構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、複合系における細菌間コミュニケーションの制御を目的としている。今年度は、液体クロマトグラフィー質量分析法によってシグナル物質の定量・局在解析を行った。その結果、膜小胞は高濃度のシグナル物質を含有していることが定量的に明らかとなったため、膜小胞を用いた細菌間コミュニケーション活性化の可能性が高まった。また、本実験系において放出誘導されるシグナル物質の量が明らかとなり、活性化されうる細菌間コミュニケーションレベルの予想が可能となった。これは、複合系において細菌間コミュニケーション制御を目指す上で重要な知見となった。さらに、細菌間コミュニケーションを評価する蛍光レポータープラスミドを再構築したため、来年度の解析を進める準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成31年度)に再構築したmNeonGreenの蛍光レポータープラスミドを使用して、共焦点レーザー顕微鏡によってライブセルイメージングを行う。さらに、フローサイトメトリーを用いた一細胞解析も併せて行い、集団中における一細胞ごとの細菌間コミュニケーションの活性度を評価していく。また、これらの実験を複合系で行い、標的細菌特異的に細菌間コミュニケーションが活性化されるのかを検証する。
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