研究課題/領域番号 |
19J20553
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内藤 優希 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / 細胞系譜の分岐 / シグナル |
研究実績の概要 |
始原生殖細胞 (PGC)形成過程において、BMPおよびWNTシグナルは必要不可欠である。これまでの研究において、これらのシグナルの下流で機能する可能性のあるOvol遺伝子群に着目し、これらの遺伝子群がPGCへの分岐を促進する因子であり、Ovol2遺伝子群が主にこの分岐に機能することを解明した。 この結果をふまえ、Ovol2が、BMPシグナルまたはWNTシグナルの細胞内シグナル分子、SMAD1/5およびβ-CATENINと相互作用することで、PGC形成に必須である 2つのシグナル入力を調整している可能性を検証した。 OVOL2とSMAD1またはβ-CATENINの相互作用の有無を、共免疫沈降により検証するため、まずFLAGタグ付きのOVOL2と、MYCタグ付きのSMAD1またはβ-CATETNINを発現させたES細胞を樹立した。このES細胞からPGCを分化誘導し、FLAG抗体を用いてOVOL2の共免疫沈降をおこなったのち、ウェスタンブロットによりSMAD1/5およびβ-CATENINの検出をおこなった。インプットサンプルとの比較により濃縮は確認できたが、SMAD1/5およびβ-CATENINのどちらも結合は認められなかった。 共免疫沈降によるタンパク質同士の結合の検出は、必要細胞数が 107細胞程度と非常に多く検出感度にも限界があることが想定される。そこで近年より高感度に転写因子の結合領域をゲノムワイドに同定できる方法が開発されつつあるクロマチン免疫沈降シーケンスを用いて、まずOVOL2が実際にPGCで結合しているゲノム領域を同定することで、シグナル入力の調整に関与している可能性を検証することにした。現在はES細胞を用いた条件検討をおこない、他の細胞種で報告されている結合領域の検出に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、共免疫沈降によりOVOL2とSMAD1およびβ-CATENINの相互作用を検証した。また、タンパク質同士の結合の検出感度には限界があることを想定し、より高感度でOVOL2のターゲット領域が検出可能であるクロマチン免疫沈降シーケンスをおこなうため、ES細胞での条件検討をおこない、既知のOVOL2の結合領域の検出にすでに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたとおり、今後はクロマチン免疫沈降をシーケンスにより、まずOVOL2がPGCで実際に結合しているゲノム領域を同定する。SMAD1およびβ-CATENINの結合領域やターゲット遺伝子は、既に多数報告されているため、OVOL2の結合領域と共通する領域の有無を検証する。 BMPおよびWNTシグナルの下流因子が検出されれば、計画どおりルシフェラーゼアッセイおよびシグナル分子のクロマチン免疫沈降シーケンスにより、Ovol2によるシグナル制御が、転写活性制御であるのか、結合の特異性制御であるのかを検証する。Ovol2のターゲット遺伝子として未知の因子が検出された場合、質量分析等をおこない他のシグナルの関与を検証する。
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