研究課題/領域番号 |
19J20559
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松木 義幸 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | アノマリー流入 / 指数定理 |
研究実績の概要 |
Atiyah-Patodi-Singer指数定理に代表される指数定理は素粒子物理学・物性物理学において、アノマリー流入機構・バルクエッジ対応の理解に重要な役割を果たしてきている。しかし、これらの定理は非物理的なセットアップの下で構成されており、物理系への直接の応用が難しいとされてきた。この問題を解決し、物理系への応用をよりスムーズにするために、特に大域的アノマリーの流入機構(mod-two Atiyah-Patodi-Singer指数)に焦点を当てて研究を行った。大域的アノマリーは摂動論では見ることができないアノマリーであるため解析が難しく、その実態が非常に掴みづらい。さらに、これまでバルクとエッジの大域的アノマリーが具体的にどのような形で相殺されているかは知られてこなかった。今年度の研究において(1)実Dirac演算子が与えるmod-two Atiyah-Patodi-Singer指数をドメインウォールフェルミオンを用いて物理学者フレンドリーに再定式化し、(2)大域的アノマリー流入機構の具体的な相殺の様子を明らかにし、(3)数学的な定式化と物理学的な再定式化が等価であるという数学的証明を数学者と共同で行った。この研究成果を国内・国際会議で発表を行い、執筆論文を通して多くの研究者と結果を共有した。これらの結果は今後、物性物理学(特にトポロジカル物質)への応用、素粒子物理・数学の発展へと繋がると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由から「おおむね順調に進展している」と言える。[1]大域的アノマリーの流入機構は摂動論による解析ができないため、その物理的再構築は難しいものであったが、十分有益な結果を得ることができた。さらに、数学者との共同研究にも発展しており、分野をまたぐ研究へと進展している。[2]トポロジカル物質への応用を目指す上で、大域的アノマリーの理解は欠かせないものであり、今後の研究へと繋がる大事な結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
ほとんど当初の研究計画通りに進める予定である。研究計画の最終目標はこれらの指数定理の物性系への応用であるが、この目標のためにはより一般的な定理であるDai-Freed定理の物理的な再定式化を行ったほうが研究が順調に進展できると考えているため、その研究も同時並行で行う予定である。
|