近年トポロジカル物質の研究が盛んに行われる中で、それらの特徴であるバルク-エッジ対応と数学における指数定理が密接に関係していることが指摘された。しかし、指数定理は物理的なセットアップに基づいて定式化されておらず、その物理的な理解・応用は乏しかった。本研究活動は指数定理を物理的なセットアップの下で再定式化し、それらを物性物理への応用することを目的としている。この背景の下で、本年度以下の二つの研究を実施した。 (1)ドメイン・ウォールフェルミオンを用いたMod-two APS指数の再定式化 Mod-two APS指数は実フェルミオンに対するDirac指数であり、大域的アノマリー延いてはトポロジカル超伝導体の理解を促進させるものである。我々は数学者と共にドメイン・ウォールセットアップ(物理的セットアップ)のもとでMod-two APS指数の再構築を行った。これによりこれまで未解明であった大域的アノマリーのバルク-エッジ対応の構造が明らかになった。この結果は物性物理への応用に向けた重要な土台となるものである。 (2)双曲格子における磁気ブロッホの定理の構築 近年、回路量子電磁力学の文脈で負の曲率を持つ双曲格子が実験的に実現された。これにより曲がった空間における物質の量子シミュレーションが可能になり、さまざまな分野での大きな進展が期待されている。我々は磁場中双曲格子におけるブロッホの定理を構築し、曲がった空間における量子ホール系の理論的基盤を固めた。
|