2021年度は昨年度に引き続き、当初予定していた五放射相称形成を制御する候補遺伝子の機能解析を進めた。それぞれの候補因子に対して複数の標的サイトを設計し、比較的高い効率で標的サイトを切断することに成功したものの、TALEN mRNA注入胚でも五放射相称の形成に異常は観察されなかった。そのため、新たにこれまでに絞り込んだ五放射相称の形成候補因子とは異なる遺伝子についても、トランスクリプトーム解析等を用いてシグナル関連遺伝子等に焦点を当てた網羅的なスクリーニングを行なった。しかしながら、これらの解析からは新たな候補因子は浮上せず、五放射相称の形成制御因子を同定する当初の目標は達成できなかった。その一方で、今年度はイトマキヒトデにおけるゲノム編集技術TALENを用いて骨片形成を制御するvegfr(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)の機能解析を行なった論文を共同筆頭著者の一人として発表した。加えて、イトマキヒトデにおけるTALENの導入についてのメソッドの詳細を記述した論文も現在投稿準備を進めている。棘皮動物の変態期に遺伝子レベルでの機能解析を行えるアッセイを構築・公表できたことは本研究の実績の一つである。
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