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2019 年度 実績報告書

超音波器官形成に着目したコウモリ類のエコーロケーションの進化的起源の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19J20608
研究機関東京大学

研究代表者

野尻 太郎  東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2022-03-31
キーワードコウモリ類 / エコーロケーション / 蝸牛 / 形態形成 / 超音波 / 進化発生学
研究実績の概要

本研究の目的はコウモリ類のエコーロケーションの進化的起源を解明することである. エコーロケーションを行うコウモリ類はその発信器官に基づき, 口で超音波発信を行う「ヤンゴコウモリ類」, 鼻で行う「キクガシラコウモリ類」, 舌打ちにより行うオオコウモリ類内の「ルーセットオオコウモリ類」に分けられるが, これらのエコーロケーションが共通祖先から由来したものであるのか, 3グループ間で独立に獲得されたものなのか長年論争が続いてきた.
初年度はコウモリ類の超音波受信に用いられる蝸牛の発生過程をマイクロCTスキャンを用いた三次元構築によって記載した.蝸牛は音波周波数を受信する感覚毛が備わっている軟骨部とその周囲の骨組織である側頭骨岩様体により構成されるが, 30種のコウモリ類,5種の他哺乳類 (ジャコウネズミ, アムールハリネズミ, ハツカネズミ, カニクイザル, ニホンザル)を対象に軟骨部と骨組織の形態形成を種間比較した.
結果として, 超音波を口から発信するヤンゴコウモリ類, 鼻から発信するキクガシラコウモリ類の間で蝸牛形態形成の方向性が異なっていること, エコーロケーション能をもたないオオコウモリ類と他哺乳類の間に発生変異が検出されなかったことから, 化石記録から支持されるオオコウモリ類がエコーロケーションを失ったとする「一回起源説」は棄却され, 口発信型と鼻発信型とで収斂進化したとする「複数回起源説」が支持された.
初年度で超音波受信器官である蝸牛発生の比較は完了し, 本研究の中軸の命題である「コウモリ類のエコーロケーションの進化的起源」について有力な証拠をもって決着させることができた. 初年度の結果は論文にまとめ, 既に国際誌へ投稿済みである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定では, 蝸牛の形態形成を記載するためのマイクロCTスキャンに時間がかかると踏んだうえでの計画を立てていたが初年度のスムーズな研究進行により全種全個体の骨組織, 軟骨解析を終えることができ, 初年度の終わりには国際誌への投稿まで終えることができた.

今後の研究の推進方策

次年度以降は, これまで申請者が行ってきたコウモリ類の胎子標本を対象に発生ステージ表の作成を行うとともに, 超音波発信に用いられる喉頭の発生過程の記載も行う予定である. 前者については初年度の夏季 (7-8月)を目安に国際誌へ論文投稿することを計画している. 後者についてはすでに喉頭のマイクロCTスキャンが完了しているため, 冬季より解析をスタートさせる予定である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] ソウル大学(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      ソウル大学
  • [国際共同研究] ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      ニューサウスウェールズ大学
  • [国際共同研究] ベトナム科学技術アカデミー(ベトナム)

    • 国名
      ベトナム
    • 外国機関名
      ベトナム科学技術アカデミー
  • [国際共同研究] チュービンゲン大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      チュービンゲン大学
  • [国際共同研究] カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      カリフォルニア大学ロサンゼルス校
  • [雑誌論文] ヒナコウモリおよびキクガシラコウモリの新生子における姿勢2020

    • 著者名/発表者名
      野尻太郎, 福井大, 小薮大輔
    • 雑誌名

      哺乳類科学

      巻: 60 ページ: 1

    • DOI

      10.11238/mammalianscience.60.1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Does prenatal development support a single origin of laryngeal echolocation in bats?2019

    • 著者名/発表者名
      Nojiri, T. & Koyabu, D.
    • 学会等名
      The 12th International Congress of Vertebrate Morphology
    • 国際学会
  • [学会発表] A 3D anatomical study using microCT images for the male genital organs of greater horseshoe bat Rhinolophus ferrumequinum.2019

    • 著者名/発表者名
      Sohn, J., Koyabu, D., Nojiri, T., Noh, H., Kimura, J.
    • 学会等名
      The 18th International Bat Research Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Does prenatal development support a single origin of laryngeal echolocation in bats?2019

    • 著者名/発表者名
      野尻太郎, Ingmar Werneburg, Nguyen Truong Son, Vuong Tan Tu, 福井大, 齊藤隆, 遠藤秀紀, 小薮大輔
    • 学会等名
      日本進化学会
  • [学会発表] 翼手類の四肢形成の特異性と生態学的要因2019

    • 著者名/発表者名
      野尻太郎, Ingmar Werneburg, Vuong Tan Tu, 福井大, 齊藤隆, 遠藤秀紀, 小薮大輔
    • 学会等名
      日本哺乳類学会

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公開日: 2021-01-27  

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