研究実績の概要 |
非天然無保護アミノ酸合成の原料として重要な化合物である「窒素上無保護ケチミン」の新規合成法を複数開発し、含窒素化合物の合成に新たな可能性を示した。 申請時から継続して取り組んだ、スカンジウム(III)触媒による窒素上無保護ケチミンの新規合成手法の開発を達成し、ワンポット反応への応用へと展開することにも成功した(Org. Lett. 2020, 22, 120-125. 筆頭著者)。従来法では高収率での合成が困難なハロゲン基やカルボキシル基、エステル基を有するケチミンを、本手法を用いることで高収率にて合成することが可能となった。また、本手法は副生成物の反応性は非常に低いという点を生かし、中間体である窒素上無保護ケチミンを単離せずにそのまま次の反応に用いる「ワンポット反応」への適用も可能であり、生物活性物質の合成中間体や、光学活性な非天然アミノ酸合成の原料として頻用されるグリシンSchiff塩基のワンポット合成を達成した。 ルイス酸性であるスカンジウムを用いた手法と相補的となる反応の開発も達成した(Org. Process Res. Dev. 2019, 23, 1718-1724. 筆頭著者)。本手法は触媒量のフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)を用いてベンゾフェノンイミンを高収率で合成可能な反応である。スカンジウム法とTBAF法という2つの相補的な反応条件による窒素上無保護ケチミンの合成を達成したことによって、共存する官能基やワンポット反応における2段階目以降の反応条件に合わせて使い分けることで、より多様な含窒素化合物合成ルートの開発が可能となった。
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