研究実績の概要 |
本年度は、ワンポット反応として新たにヒドロホスホニル化が適用可能であることを見出した(筆頭著者、論文投稿準備中)。無保護ケチミンのヒドロホスホニル化では、アミンフリーのα-アミノホスホン酸を直接的に合成できる。このα-アミノホスホン酸もα-アミノ酸の生物学的類縁体であり、その効率的な合成法を確立できたことは医薬化学上重要であると考える。前年度の成果と合わせて、比較的不安定な無保護ケチミン中間体からストレッカー反応とヒドロホスホニル化というアミノ酸類縁体を合成可能な2パターンの反応へとワンポットで展開可能な手法を確立できた。 また、これらワンポット反応を開発する過程で、単離精製した無保護ケチミンを用いることで、不斉反応を達成可能であることを発見した。ストレッカー反応に関して、シンコナアルカロイド由来の不斉有機分子触媒を用いることで、高い収率と立体選択性で無保護アミノ酸等価体を直接的に合成可能であった(第3著者、Org. Lett. 2021, 23, 4553-4558.)。同様にヒドロホスホニル化についても、不斉触媒を用いて高立体選択的な反応を達成した(筆頭著者、投稿準備中)。これら反応は、採用期間中に達成した無保護ケチミン合成法(①筆頭著者、Org. Process Res. Dev. 2019, 23, 1718-1724.、②筆頭著者、Org. Lett. 2020, 22, 120-125.)を応用したワンポット不斉反応にも展開可能であり、無保護ケチミンを単離することなく対応するケトンから直接無保護アミノ酸類縁体を高い立体選択性で得られた。これら成果によって、合成中間体の無保護ケチミン合成からαアミノ酸類縁体の不斉合成までの全工程での環境調和型反応を達成した。
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