本年度は、3つの研究を行った。1つ目は、慢性疼痛の過活動に関するナラティブレビュー研究であった。本研究では、過活動研究の歴史や定義、測定法、過活動と疼痛関連アウトカムの関係、過活動への介入について概観した。そして、過活動の背景に完全主義というパーソナリティが影響していると考え、今後の臨床実践や研究の展開について論じた。本研究は、既に国内誌にて発表されている。過活動というテーマを扱ったレビュー論文は本邦で初めてであり、今後の臨床研究への活用が期待される。 2つ目は、過活動を呈する患者に行った認知行動療法の事例研究であった。過活動を呈する患者に対して不眠への介入や過活動の緩和、その背景にある完全主義への介入を行った。途中、過活動や不眠の再発が見られながらも、結果的には患者の過活動傾向は弱まり、復職を果たすことができた。過活動の変容には、ペーシングと呼ばれる従来の介入だけでなく、背景にある完全主義への介入も必要であることが示唆された。本研究は、国際誌に既に採択されている。 3つ目は、完全主義が過活動を強め、疼痛や生活支障に影響を及ぼすという仮説を検証する縦断研究であった。当初、病院で臨床研究を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン調査で行うことに変更した。データは3時点で収集し、666名のデータが有効回答となった。現在はデータ取得を終了し、解析を行っている途中である。
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