研究課題/領域番号 |
19J20625
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大山 望 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 昆虫化石 / 美祢層群 / 三畳紀 / Madygellinae亜科 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の5つの点で成果を上げることが出来た.内容は以下の通りである. 1)世界でも初となる絶滅亜科Madygellinae亜科の体付き標本の発見と記載:上部三畳系美祢層群から世界でも初となる絶滅亜科Madygellinae亜科の体付き標本の発見し,3属4種(1新属4新種)含まれていることが明らかとなった.体化石の発見により,翅のみでの分類体系を体も含めたより凝固な分類体系を再構築が可能となった.これらの結果は投稿準備中である. 2)上部三畳系美祢層群の昆虫化石層の実態解明:野外踏査で新たに発見した昆虫化石露頭の詳細な観察から,昆虫化石は層厚約10cmの黒色泥岩層から植物片と1mm以下のサイズがまばらで自形を持たない鉱物と共産することが明らかとなった.現在,この鉱物の同定のために岩石切片と薄片の作成とSEM観察,化学分析を行うための準備中である. 3)専門書の執筆分担(昆虫化石全般):2冊の書籍の分担執筆者として昆虫史の概要,世界やおよび日本の昆虫化石産地についてそれぞれまとめた.既に原稿を提出し2021年度以降順次出版予定である. 4)下部白亜系手取層群産のゴキブリ群集の報告:下部白亜系手取層群からゴキブリ群集を見出した.このことにより東アジアの縁辺部の温暖・湿潤な環境にもゴキブリ類が生息していたことが明らかとなった.これらの結果は現在投稿中である. 5)下部ジュラ系ヒルドセラス科アンモノイド化石の岩相による保存状態の違いについて:豊浦層群西中山層・ビーコン石灰岩・ホィットビー泥岩層の下部ジュラ系ヒルドセラス科アンモノイド化石の保存部位や殻の破損具合を観察を行った.それらの結果からアンモノイドが死後,どの程度まで遺骸の破損や分解が進んだ段階で化石として地層中に保存されたかについて検討した.本結果は既に出版済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコロナウィルスの影響により当初予定していた計画を大きく変更せざるを得ない状況となった.本年度は,投稿論文執筆に精力的に取り組むとともに,専門書の執筆分担も担当した.このことにより,専門書の分担執筆2編と共著論文1編の出版,今年度中の受理には結びつかなかったものの,査読付き国際誌への投稿を1編完了させ,もう1編も次年度中の投稿が可能な状況まで執筆を進めることが出来た.以上のことから,期待以上の進展があったともいえるが,オンライン化に対応した学会発表をすることが出来なかったことから,「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,上部三畳系美祢層群の地質学的研究と昆虫化石を対象とした分類学的研究を行ってきた.来年度以降,地質学的研究については現地踏査で得た地質情報を踏襲し地質図を再作成し,堆積環境の復元を試みる.また,岩石切片の作成や化学分析などの室内実験に集中しマクロスケールだけでなくミクロスケールでのより詳細な観察を行い,現在昆虫化石の化石化過程のカギを握っている鉱物の実態を明らかにする.これらの情報から昆虫化石の化石化過程についてに考察を行い,まとまり次第,論文執筆に着手する.分類学的研究については順次論文化を進め,博士論文としてもまとめていく予定である.
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