研究課題/領域番号 |
19J20646
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥村 公貴 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 利子率 / スーパースター企業 / 人口減少 / 経済成長 |
研究実績の概要 |
2019年度は経済成長理論の分野で次の2つの研究を行った。
1つ目の研究では、スーパースター企業の台頭が実質利子率や資本蓄積に与える影響について分析した。先進各国では過去数十年にわたって実質利子率が低下している。また、最近の実証研究では、企業の市場シェアの集中度が増加し、それによって投資需要が弱くなっていることが指摘されている。本研究では、一部の企業の生産性の上昇が実質利子率や資本蓄積に与える影響を理論モデルを用いて分析した。分析の結果、生み出す付加価値と比べて投資を多く必要としない企業の生産性の上昇が、その企業の市場シェアを増加させることを通して、実質利子率の低下を引き起こすことがわかった。また、この変化によって、資本が社会的に最適な水準と比べて過剰に蓄積される場合があることがわかった。加えて、米国のデータを用いてシミュレーションを行い、企業の生産性の変化が利子率に与えた影響を分析した。
2つ目の研究では、人口成長率の違いが地域間の所得水準の収束に与える影響について分析を行った。この研究では、一部の地域で著しい人口減少が起きている日本の都道府県レベルや市町村レベルのデータを用いて分析を行った。分析の結果、所得水準が低い地域のほうが所得水準が高い地域よりも経済成長率が高くなる、収束の現象が確かめられた一方で、人口減少が著しい地域では収束の速さが遅いことがわかった。また、1995年以前は人口減少とその地域の経済成長率に有意な関係が見られなかったが、1995年以降は人口減少がその地域の経済成長率にマイナスの影響を与えていたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた2つの研究については共に、2019年度中に、学会発表を行った上で学術誌に投稿したため。
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今後の研究の推進方策 |
1つ目の研究については、理論分析の妥当性を検証するために実証分析を追加したいと考えている。また、この研究と関連して、スーパースター企業の表れやすさの国の間での違いやその要因、及び、それらの違いが経済成長に与える影響について分析したいと考えている。
2つ目の研究については、この研究と関連して、人口動態の変化が地域間の資金フローに与えた影響について分析を行っている。
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