研究課題/領域番号 |
19J20669
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 健史 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ロボット / 動力学モデル / 注意機構 / グラフニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
(1) ロボットの正確な動力学モデルの学習を可能にするニューラルネットワーク設計手法とデータ収集手法の提案(論文投稿準備中) 少数の学習用運動データからでも、効率よく正確なロボットの動力学モデルを学習するための手法に関する研究を引き続き行っている。ロボットの物理的な構造(リンクの接合関係など)に基づいて構造化されたニューラルネットワークを用い、人間が介在することで効率化されたデータ収集手法を併用することによって、データの収集とモデル化の両面からロボットの動力学モデル学習の効率化と性能改善を実現した。現在は論文投稿に向けた詳細の最終確認中である。 (2) 多階層注意機構を取り入れたグラフニューラルネットワーク構造の提案(論文投稿済み・査読中) (1)の研究中に、ニューラルネットワークの構造を改変することによる性能改善についての着想を得たため、もう一つの研究テーマとして取り組んだ。グラフニューラルネットワークはあるノードの近傍の部分グラフの構造から当該ノードの性質を推定するモデルであるが、この近傍部分グラフが一定程度大きくなると性能が劣化する問題が以前から指摘されていた。我々は、複数の大きさの部分グラフに対して注意機構を適用する、多階層注意機構を取り入れたグラフニューラルネットワークの構造を提案し、実験により性能の向上を示した。この結果を国際論文誌に投稿し、現在査読中である。 (3) 医療現場で利用される機械学習・人工知能についての書籍の執筆 医療現場での機械学習・人工知能技術の応用可能性について論じる書籍を共同執筆した。2021年6月に発売される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロボットの動力学モデルに関する研究について、目標としていた2020年度中の論文投稿には至らなかったものの、必要なデータの解析と執筆は完了しており、投稿前の最終確認段階にある。 また、新たに始めた多階層注意機構を用いるグラフニューラルネットワーク構造については、国際論文誌への投稿を行い査読中である。 さらに、共著者として書籍の執筆にも携わることができた。 これらの事項を踏まえ、研究の進展はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ロボットの正確な動力学モデルの学習を可能にするニューラルネットワーク設計手法とデータ収集手法の提案 まず、現在準備中の論文を早期に投稿し、2021年度内に採択されることを目指す。また、発展的な方向性として、ロボットが外部環境に対して柔軟構造物を挟んで接触する場合の動力学モデルの学習に取り組む。柔軟構造物は単純な運動方程式に基づいたモデル化が難しく、ニューラルネットワークによるデータ駆動のモデル化が効果を発揮する対象であると考えられ、提案手法の優位性を示すことができると期待している。 (2) 多階層注意機構を取り入れたグラフニューラルネットワーク構造の提案 2020年度に投稿した論文の成果をもとに、現実世界で取り組まれている問題に対する予測精度が改善することを実証する。具体的には、プログラミング言語の構文木に基づいて、プログラムの内容を解釈するためのモデルを学習させ、多階層注意機構が推定制度の向上に資することを示す。関連して、この提案手法をencoder-decoderモデルとして拡張し、系列出力が求められるタスクへの応用可能性などを探索していきたいと考えている。
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