最終年度として、これまでに手掛けた研究内容について複数の発表を行った。 1) まず、ロボットの正確な動力学モデルの学習を可能にするニューラルネットワーク設計手法とデータ収集手法の提案を行う研究については、英文原著論文としてまとめ、Neural Computation誌に投稿・受理された。この論文では、ロボットの運動方程式に基づいた構造のニューラルネットワークを用いることにより、小さなニューラルネットワークでも正確な動力学モデルを学習でき、高速なモデルベース制御に用いることができることを示した。 2) 次に、多階層注意機構を取り入れたグラフニューラルネットワーク構造の提案を行う研究については、前年度末にNeural Networks誌に投稿済みであったが、3度にわたるmajor revisionの末、本年度後半に受理されるに至った。この論文では、グラフデータ構造の階層的な構成性に着目し、グラフニューラルネットワークの信号伝播の各段階における情報を保持することで、性能を向上させられることを示した。 これら2本の論文が受理・公開されたことで、本研究課題の目標は十分に達成されたと評価することができる。すなわち、ニューラルネットワークの設計において、ドメイン知識を効果的に利用した構造を導入することで、少ないパラメータでも精度の良い予測が可能な学習器を構築できること、ひいては(パラメータ数が小さいことにより)学習データ数も小さく抑えられ、機械学習にかかるコストを低減できることが示された。 さらに、上記の研究を遂行する過程で得られた知識・知見を活かして、医療現場で用いられる人工知能技術について取り扱った書籍の執筆でも中心的役割を果たした。
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