研究実績の概要 |
前年度までに得られた堆積層及び地殻の詳細な地震波速度構造を国際誌に出版した。本年度はこの速度構造を用いて、周期0.6-2.5秒のP波波形を解析することで、茨城沖領域で発生した中小規模地震のセントロイド・モーメントテンソル解(CMT解:地震の震源位置、断層や滑りの方向などを示すパラメータ)を推定した。計算コストの制約により、理論波形の計算には有限差分法による地震波伝播シミュレーションを用いた。短周期波形を使用したことで、長周期波形を解析した既存のCMT解よりも高い空間分解能でCMT解が得られた。また、観測期間中に解析領域内で得られた既存のCMT解は約200個だったのに対し、本研究では536個のCMT解を推定することができた。得られたCMT解からは以下の主な特徴が得られた。 (1) 観測網の北東部で発生した余震の多くは逆断層であり、傾斜角と空間分布は太平洋プレートの沈み込みと一致している。また、東北地震の最大余震の破壊域 (Kubo et al., 2013) やスロー地震の一種であるTremorの発生域 (Nishikawa et al., 2019) と空間的に棲み分けている。(2)そのすぐ南部には、深さ10-15 kmに正断層の地震を発見した。これは、沈み込む海山が作り出す応力状態 (Sun et al., 2019など) を反映していると考えられる。(3)西部には、プレート境界よりも深い正断層が推定された。これらは、沈み込む太平洋プレートが、上に乗っているフィリピン海プレートによって曲げられたために発生したと解釈される。(4)北部には、プレート境界付近に横ずれ断層が推定された。本研究結果は現在、国際誌にて査読中である。
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