研究課題
有機太陽電池は、一般的なシリコン太陽電池に比べ、軽量・フレキシブルであり、場所を選ばず設置可能であることに加え、より安価に製造可能である為、太陽光発電のさらなる利用拡大が実現できる。しかし、変換効率が低いことが課題である。単一吸収層内で生じた励起子を電荷として取り出す事が可能となれば、電圧損失が少なくなり、さらなる高効率化が望める。我々は、p型無機半導体であるCuSCNを活性種の拡散反応による電解析出で溶液から直接高結晶性な薄膜として得る手法を確立しており、電解浴に有機色素を添加することにより、両者が自己組織的に複合化した複合膜が得られることもまた報告している。そこで、J会合体を形成し、非線形光学特性を発現することが報告されている有機結晶であるDASTや有機色素同士内で電荷移動が期待できる色素ペアとのCuSCNとを複合化し、その複合膜内での電荷分離が起こり、単一吸収層型太陽電池への応用を期待できる複合材料の創出を目的としている。電気化学的に自己組織化したCuSCN/有機色素複合膜が光を吸収し、その複合膜内で電荷分離をし、電荷分離の際に電圧損失が生じない、単一光吸収層型高効率太陽電池を実現する為に、CuSCN/有機色素複合膜の自由自在な作り分けが必要不可欠となる。そこでCuSCN/有機色素複合膜の複合化メカニズム・色素導入モデルを確立し、成膜のコントロール手法を確立することを目的とした。加えてエネルギー貯蔵という観点から、CuSCNを電気化学的に還元し得られたCuを二酸化炭素還元電極触媒としての応用を目指す。さらにはCuSCNと有機CO2電極触媒能を有する色素とを複合化し、電気化学的に還元することで、Cu/有機色素、無機/有機ハイブリッド電極触媒の達成を目指す。
2: おおむね順調に進展している
先述した通り、CuSCN/有機色素複合膜が光を吸収し、その複合膜内で電荷分離をし、電荷分離の際に電圧損失が生じない、単一光吸収層型高効率太陽電池を実現する為に、CuSCN/有機色素複合膜の自由自在な作り分けが必要不可欠となり、CuSCN/有機色素複合膜の複合化メカニズム・色素導入モデルを確立および成膜のコントロール手法を確立することを目的としてきた。上記のような太陽電池の達成が期待できるスチルバゾリウム色素であるDASTとCuSCN薄膜において、電解液の浴組成によって得られる複合膜がそれぞれ相分離しているか否かをコントロールすることが可能となった。さらには、その異なる構造の複合膜が得られたのは、異なる色素導入メカニズムに起因することが明らかになった。さらにCuSCNを電気化学的に還元することでCuを得られることを確認した。さらにはCuSCN/有機色素ハイブリッドまくにおいても有機色素と複合化しながらCuへのコンバージョンが確認された。この複合膜が特異的なCO2還元能を示したことから、CuSCN/有機色素、無機/有機ハイブリッド電極触媒の達成が期待できる。
本年度は、CuSCNとの親和性が異なるスチルバゾリウム色素との複合化に取り組み、DASTにおいて提唱した色素導入メカニズムの普遍性を明らかにしていく。さらに、有機色素同士で電荷移動が期待できる色素ペアを探索し、そのペアとCuSCNと複合化することで、CuSCN/有機/有機の3原系ハイブリッド薄膜を目指し、目指している単一吸収層型太陽電池になるかを検証する。CuSCNから電気化学的にコンバージョンしたCuおよびCu/有機色素ハイブリッド薄膜のCO2還元電極触媒能のプロダクト分析を行い、他の電極触媒との優劣を確認する。
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ECS Transactions
巻: 97 ページ: 457~469
10.1149/09707.0457ecst