研究実績の概要 |
p型無機半導体であるCuSCNと有機色素のハイブリッド薄膜の電気化学的自己組織化現象について、その原理解明と制御手段の確立に取り組んだ。色素複合化の選択律を系統的な実験により明らかにした。HSAB則に従うソフト性の高いLewis塩基性官能基を有する色素のCu(I)サイトへの配位や、カチオン性色素のCu(I)イオンへの置換が複合化の化学原理であることを証明した。また、ジメチルアミノスチルバゾリウム(DAS)色素とCuSCNの複合化について、浴中DAS濃度が組成、ナノ構造、結晶成長に与える影響を詳細に調べ、低DAS濃度域では、拡散律速でCuSCN結晶粒中に導入され、ある濃度以上になると表面反応によって色素導入が規制され、ナノスケールで無機有機が相分離した複合膜を形成する反応機構のスイッチングとハイブリッド構造の作り分けが起こることを突き止めた。さらCuSCN/DASハイブリッド形成の物理化学モデルを構築し、色素導入スイッチングの定量的記述を果たした。レビッチモデルで記述される拡散律速導入に対し、高DAS濃度域ではCuSCN : DAS = 2 : 1の錯体表面濃度が膜成長過程で不変であり、その安定度定数によって膜組成が支配されることを明らかにした。また、その機構変化の境界を記述する数理モデルを完成させた。加えて、電子吸引性の高いメトキシ基とシアノ基を有するMTS, CNSスチルバゾリウム色素を用いた製膜分析実験を通じて、提唱したモデルの普遍性を証明すると共に、界面錯安定度によるスイッチング現象の定量表現に成功した。ニュートラルレッド(NR)とのハイブリッド膜電析とCO2還元電極触媒への応用に取り組み、機能材料創出への多様性と可能性を示した。
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