研究課題/領域番号 |
19J20708
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 廣直 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | オスミウム同位体比 / 白亜紀 / 大規模火成活動 |
研究実績の概要 |
本年度では白亜紀中期の連続的な海洋オスミウム同位体比復元を行った。テチス海の遠洋域で堆積したイタリアUmbria Marche Basinの堆積岩とインド洋で掘削された海洋コアであるODP Site 763Bを用いて未測定であった中期アルビアン~セノマニアンにおけるOs同位体比の復元を行ったところ、アルビアン中期においてOs同位体比が熱水の値に急激マントルの値に近づくことが明らかになった。これは、白亜紀中期に海台形成などの未知の大規模火成活動が存在したことを示している。また白亜紀中期の長期的な海洋オスミウム同位体比のトレンドが明らかになり、白亜紀中期アプチアンにおいて熱水活動が最大であったことが明らかになった。 また白亜紀前期オーテルビアンに発生した白亜紀で最初の海洋無酸素事変(Faraoni Event)での海洋オスミウム同位体比変動の復元も行った。その結果、海洋無酸素事変周辺において海洋オスミウム同位体比が40万年周期で大きく変動していることが明らかにされ、白亜紀中期に大規模なモンスーン強度の変動があったことが示唆された。また他の白亜紀海洋無酸素事変にみられるような海洋オスミウム同位体比の急低下は確認されていないことから大規模火成活動はFaraoni Eventの引き金ではないことが示された。 加えて本年度では太平洋の掘削コアであるDSDP Site 463の鉱物学的な分析も行い、白亜紀最大の海洋無酸素事変であるOAE1a周辺での海洋環境の復元にも取り組んだ。その結果OAE1a周辺で還元的な環境でのみ形成される菱鉄鉱が発見された。菱鉄鉱の産出レンジから海底の貧酸素環境はこれまで考えられていたよりも長期間続いていたことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では120サンプルもの堆積岩のオスミウム同位体比分析を行うことができたため、本研究の目的である白亜紀中期の連続的なオスミウム同位体比復元は順調に進んでいる。本研究の主軸である白亜紀海洋無酸素事変1bにおける海洋Os同位体比復元の論文は国際誌(Scientific reports)に受理された。また白亜紀アプチアンの海洋オスミウム同位体比変動に関する論文も国際誌(Geology)に投稿・受理された。また他に1編が投稿中、日本が投稿予定である。当初の計画ではイタリアにおいて野外調査を行い堆積岩のサンプリングを行う予定であったが、イタリアに渡航することができなかった。しかし共同研究者にサンプリングを行っていただいたおかげで問題なく分析は進んでいる。高知JAMSTECにおいてPb同位体比分析を行う予定であったが高知県への出張が制限されていたため、この点は関しては問題であったが、その分オスミウム同位体比分析を進めることができたので慎重くはおおむね順調といえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は白亜紀前期バレミアン、白亜紀後期チューロニアンの海洋オスミウム同位体比分析を横須賀JAMSTECにて行い、炭素同位体比分析を東京大学大気海洋研究所で行う。当初予定していたイタリアでのサンプリングを行う見込みがたたないため共同研究者である、イタリアUrbino大学のRodolfo Coccioni博士にサンプリングを依頼する。また、イタリアの堆積岩のほかに海洋掘削コアであるDSDP Site 511, ODP Site 763に関しても分析を行う。これにより白亜紀の長期的なオスミウム同位体比変動が明らかになり、大規模火成活動と環境変動との関連が明らかになる。まだ実施できていない鉛同位体比分析を高知JAMSTECにて行うことで大規模火成活動がどこで発生したかを明らかにする。得られた結果は順次論文としてまとめ国際誌に投稿する。ほかにも国内・国際学会へも積極的に参加し得られた結果を発表する。
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