研究課題/領域番号 |
19J20709
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩間 智紀 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 電気化学 / 電気化学イメージング / バイポーラ電極 / 電気化学発光 / 高時空間分解能 |
研究実績の概要 |
電極アレイを用いた電気化学イメージング法はラベルフリーかつ高感度、高時間分解能な生体分子イメージングが可能であるが、各電極への配線の必要から空間分解能が制限されていた。本研究ではバイポーラ電極および電気化学発光による検出システムをベースとした新規電気化学イメージングシステムの開発を行うことで、従来より優れた空間分解能イメージングを実現し、神経細胞活動の新たな知見を得ることを目的とする。 多孔膜(Track etched膜)に金を無電解析出させる方法により35 マイクロメートルピッチに金電極が並ぶバイポーラ電極アレイの作製に成功した。これは従来の生体分子イメージングを目的とした電極アレイより密な電極配列を実現している。作製したバイポーラ電極アレイを用いてサンプル物質(フェリシアン化カリウム)溶液の流入イメージングを達成し、電気化学発光シグナルによる高時空間分解能イメージングのデモンストレーションを達成した。 さらに電極アレイの上にがん細胞(MCF-7)の呼吸活性を止めたもの/止めていないものを静置し、呼吸活性の有無による酸素消費量の違いのイメージング(細胞塊の生死判別)に成功した。これにより、本イメージングデバイスのバイオイメージングへの応用可能性を示した。 また多孔膜に導体ペーストを詰め込む方法による簡便かつ高精度なバイポーラ電極アレイの作製にも成功し、従来の電気化学イメージングでは達成できなかったナノスケールの空間分解能のバイオイメージング手法の確立にむけて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定環境を整え、バイポーラ電極アレイの作製方法を確立させた点においては順調に進捗している。また本イメージングシステムを用いて従来の電気化学イメージングよりも高空間分解能なイメージングを実現した点においても計画通りである。 しかし当初目標としていたナノスケールのバイポーラ電極アレイ(ナノメートルスケールの電極ピッチでバイポーラ電極が並んだ電極アレイ)の作製およびイメージングは未達であり、これは光学顕微鏡による表面評価が容易なマイクロスケールの多孔膜による検討を重ねることを優先させたためである。マイクロスケールなバイポーラ電極の作製には無電解析出法による多孔膜への金析出および導体ペーストを埋め込む方法を検討し、それぞれの長所・短所・特徴に関する知見を得た。 現在はバイポーラ電極アレイの作製ノウハウや知見が増えたため、より細密かつ高配列に孔の空いた多孔膜を用いたバイポーラ電極アレイの作製にシフトしている段階である。 がん細胞の呼吸活性評価は当初の計画にはなかったものの、本イメージングデバイスのバイオイメージングへの応用可能性を示すことが重要と考え、実践に移した(論文投稿中)。この評価によりバイオイメージングへの応用可能性が示されたとともに、実際に生体サンプルを測定する際の注意点(例:電極上における物質拡散阻害が大きい)についても知ることができた。 計画していたグルタミン酸やグルコースなどの生体分子のイメージングおよび2項目同時イメージングは未達である。これはバイポーラ電極アレイの作製法検討・確立を優先させたためであり、次年度以降エフォートを注ぐべき項目である。
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今後の研究の推進方策 |
本来の目標であったナノスケール~数マイクロスケールのバイポーラ電極アレイの作製を行う。これはマイクロスケールのバイポーラ電極アレイの作製検討で得た知見を参考にしながら行う。 また生体分子のイメージングに向けた検討を第一に行う。まずはメディエーター含有カーボンペーストを塗り込む方法により、過酸化水素のイメージングを可能にする。過酸化水素のイメージングを確立した後、電極アレイ上に酵素膜修飾を行いグルコースやグルタミン酸などの生体分子のイメージングを試みる。このとき生体サンプルから生じる上記の生体分子のイメージングも検討する。 生体分子イメージング法が確立したのち、2種類の酵素を市松模様上にバイポーラ電極アレイにパターニングすることを試みる。当初はナノインクジェットプリンタによる修飾を検討していたが、高額な装置であるため、PDMSモールドを用いた修飾法も検討する。 また生体サンプルの評価を行いやすくするため、細胞培養技術の習得も同時並行で進める。
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