研究実績の概要 |
本研究では、高い熱耐久性および感温機能を示す強発光性の希土類配位高分子の開発を目的としている。具体的にはアルミニウム(Al(III))錯体と七配位テルビウム(Tb(III))錯体を組み合わせることで、感温特性を有する配位高分子の合成を行っている。高い熱耐久性を達成するために、七配位型Tb(III)配位高分子の合成を目指す。そこで、当該年度は構造を組みやすくするため、始めにシンプルなビピリジン配位子を用いたTb(III)配位高分子の合成に注目した。 ここでは、比較的に小さな4,4'-ビピリジン配位子をかさ高い七配位型Tb(tmh)3錯体に導入することを試みた。その錯体を合成し、七配位型二核錯体および八配位型配位高分子の両構造を得ることができた。それぞれの錯体を分離するために、独立した合成法を検討した。Tb(tmh)3前駆体と4,4'-ビピリジン配位子の混合比率が重要であることがわかった。 単結晶構造解析測定結果より、配位高分子の4,4'-ビピリジンは二核錯体と異なりねじれていることを確認した。また、それぞれの錯体の光物性を測定した結果、二核Tb(III)錯体では励起スペクトルの励起端が配位高分子より長波長まで伸びていることがわかった。これは二核錯体の4,4'-ビピリジン配位子がねじれていないことから、π電子が広がっていることに起因すると示唆された。また、4,4'-ビピリジンの部位であるピリジンを用いて七配位型および八配位型Tb(tmh)3錯体を合成し、それぞれの光物性を比較するこで大きな変化がないことがわかった。このことから、4,4'-ビピリジン配位子のねじれはTb(III)配位高分子の感温機能に大きな影響を与えると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
4,4'-ビピリジン配位子を用いた二核錯体および配位高分子の感温特性を温度可変の寿命測定を行い、それぞれの錯体の感温機能の評価を行う。また、希土類元素として、Tb(III)だけでなくユウロピウム(Eu(III))およびその他の希土類イオンを用いて二核錯体および配位高分子を合成し、それらの感温特性についても検討する。 次に、4,4'-ビピリジン配位子を用いた二核錯体を配位高分子に構造変化させる検討を行う。同じ配位子を用いて2つの構造を得られているので、十分なエネルギーを与えることで構造が変化することが期待される。そのために加熱、暴露実験や圧力などの実験を行い、さらに配位高分子の機能を拡張し、感温機能の制御を試みる。 また、4,4'-ビピリジン配位子の代わりにメチル基やフッ素化している4,4'-ビピリジンの誘導体を用いて希土類配位高分子を合成する。配位子の電子・構造を変化させることで、エネルギー移動過程に影響し、感温機能および構造の安定性が向上することが期待される。
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