研究課題
本研究では、超低消費電力非同期順序回路人工内耳モデルの設計と実装及び実機実験を行う。本研究は、既存手法との比較を通して提案人工内耳モデルが消費電力や回路実装の観点で優れていることを示すことを目的とし、より効率の良い人工内耳回路の開発へ向けた基礎研究と位置づけられる。具体的には、例えば以下などのテーマに取り組む。(1)人工内耳モデルを設計するために、その基礎となる非同期順序回路で実装される非線形発振器の特性を、より簡素なモデルを通して調査する。(2)非同期順序回路で実装される非線形発振器を用いて新たな人工内耳モデルを設計し、数値実験などによって実際の生物が有する蝸牛が呈する非線形応答現象(例えば二音抑圧や結合音現象など)が再現できることを明らかにする。(3)提案人工内耳モデルのデジタルハードウェア実装を行う。実機実験によって提案統合内耳モデルが人工内耳におけるフィルターとして動作することを明らかにする。また、消費電力、回路実装面積などを比較し、提案統合内耳モデルが既存モデルよりも優れていることを明らかにする。2019年度は、主に(1)の内容に取り組んだ。非同期順序回路で実装される非線形発振器が用いられる簡素なモデルとしてCPGモデルやニューロンモデルを対象に、回路の設計、比較、解析などを行い、それらのモデルが呈する典型的な非線形現象である、同期現象や分岐現象に関する新たな知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は、(1)非同期順序回路で実装される発振器の結合系に基づくCPGモデルを開発し、(2)非同期順序回路で実装されるニューロンモデルを開発し、(3)非同期順序回路で実装される位相発振器の結合系に基づくCPGモデルを開発した。これらのテーマから非同期順序回路で実装される発振器及びその結合系によって設計される人工内耳モデルを開発するための基礎的な知見を得ることができており、これらの成果を国際会議及び学術論文誌で発表することができた。以上のことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
2020年度は、2019年度の研究結果から得られた知見を基に、非同期順序回路で実装される非線形発振器を用いて新たな人工内耳モデルを開発する。数値実験などによって提案モデルが蝸牛の非線形応答現象を再現できることを明らかにする。また、2021年度はそれらの結果を基に提案人工内耳モデルのデジタルハードウェア実装を行い、既存モデルとの比較などを行うことを予定している。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers
巻: Volume 67, Issue 6 ページ: 1989-2001
10.1109/TCSI.2020.2971786