研究課題/領域番号 |
19J20749
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 研介 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 変分的時間離散近似解法 / 障害物問題 / 爆発解析 |
研究実績の概要 |
本年度は、藤田型と呼ばれる非線形項をもつ四階半線形放物型方程式に対する障害物問題について主に考察した。高階性により最大値原理や優解劣解法といった解析手法が一般に破綻するため、また、障害物の存在により解の良い正則性は一般に期待できないため、高階放物型方程式に対する障害物問題は時間局所可解性すら明らかではない。汎函数が凸かつ下に有界である場合には変分的時間離散近似解法により解の存在が得られているが、本年度考察した問題は対応する汎函数が非凸かつ下に非有界であるため、既知の手法をそのまま適用することはできない。さらに、障害物が無い場合、非線形項の影響により解が有限時間で爆発することが知られており、解の最大存在時刻を予め指定する変分的時間離散近似解法と半線形の本問題の相性は極めて悪いと言える。 本年度の研究では解が有限時間爆発し得る構造にも応用できるよう、従来の変分的時間離散近似解法を改良した新たな近似解の構成の仕方を与え、四階半線形放物型方程式に対する障害物問題の時間局所可解性を示した。また、高階放物型障害物問題では、一般に解のエネルギーに関する時間方向の連続性が期待できないが、変分的時間離散近似解法を「解の存在を示す手法」ではなく、「正則性が良い解の近似スキーム構築手法」と見做すことにより、解のエネルギーに関する時間方向の連続性が無くてもポテンシャル井戸の方法を適用可能であることを示した。さらにその応用として、有限時間で爆発する解の存在を示した。この結果は現在投稿中である。 さらに、弾性流に対する障害物問題についても時間局所可解性を得た。特に、本問題は主要部が非線形性を有する方程式に対する障害物問題として定式化されるため、準線形の問題に対しても変分的時間離散近似解法が応用可能であることがわかる。さらに応用として、解の時間大域挙動についても考察した。この結果は現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、障害物問題特有の正則性に関する困難点、及び高階性に由来する困難点を打破し、高階放物型障害物問題に対する時間局所可解性や解の爆発などを示した。これにより研究計画において当初掲げていた高階放物型障害物問題に対する「基礎理論の整備」を進めることができたと言える。一方、障害物問題特有の現象を取り出すという点においては未だ発展の余地があるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度及び最終年度では、障害物が特異現象を誘発または抑制し得るかの解析に取り組む。一つの具体的な例として、弾性流に対する障害物問題において解が有限時刻(または時刻無限大で)爆発するか考察する。障害物を課さない場合、弾性流の解は有限時刻で爆発することなく、時刻無限大でエラスティカと呼ばれる定常解に収束することが知られている。そのため、障害物問題において解の爆発が起こるならば、障害物特有の現象と考えることができる。また、解の凸性といった形状解析についても推進していく予定である。
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