研究課題/領域番号 |
19J20760
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬場 慧 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 超低周波地震 / スロー地震 / 巨大地震 / すべり欠損 |
研究実績の概要 |
現在、スロー地震と呼ばれる通常の地震よりも遅いすべり速度で断層破壊が起こる現象の研究を行っている。スロー地震は、沈み込み帯のプレート境界面上の、巨大地震の震源域のすぐ隣で発生し、巨大地震と共通の発震機構解をもつので、巨大地震との関連性も指摘されているが、活動の実態をつかめていない部分も多い。採用前より行っていた研究である、スロー地震の一種であり20秒から50秒の周波数帯域で観測される超低周波地震(以下VLFE)の、北海道・東北地方太平洋沖における検出を引き続き行い、巨大地震の大すべり域の内部とその周辺とでは、本震前後の時系列変化が逆になることが明らかにされ、この研究成果を地球惑星化学連合大会で発表したほか、地球物理学の国際誌であるJournal of Geophysical Research: Solid Earthに投稿し、査読を経て受理され、出版された。また、西南日本でもVLFEの検出を行い、西南日本のVLFEと東北沖のVLFEについて、それぞれの地域でVLFEによって解放されたモーメントの分布を定量的に評価し、各地域のVLFEのモーメントの解放量と、測地学的に推定されたプレート間の固着の強さを比較した。その結果、プレート間の固着が比較的弱い九州の沖合の日向灘のVLFEのモーメント解放量は、巨大地震が発生しプレート間の固着がより強い四国・紀伊半島沖や東北沖のVLFEよりも大きいことがわかり、VLFEのモーメントの解放量とプレート間の固着の強さの間には明らかな負の相関があることが分かった。この研究成果を地球物理学の国際誌であるGeophysical Research Lettersに投稿し、現在査読中である。現在、中米のコスタリカ沈み込み帯に解析対象を移し、スロー地震の一種である低周波微動の検出および震源決定や、VLFEの検出および発震機構解の推定に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スロー地震の一種である超低周波地震(以下VLFE)を、北海道・東北地方太平洋沖と西南日本の両方で網羅的に検出し、日本周辺のVLFEの活動を包括的に明らかにした。北海道・東北地方太平洋沖のVLFE検出の研究成果を地球物理学の国際誌であるJournal of Geophysical Research: Solid Earthに投稿し、査読を受け、出版することができた。さらに、北海道・東北地方太平洋沖と西南日本で、VLFEの活動度とプレート間の固着の強さには負の相関があることを明らかにした。この研究成果は、すでに国内外の学会で発表され、論文として地球物理学の国際誌であるGeophysical Research Lettersに投稿中であり、現在査読を受けているところである。現在、日本国外に解析対象を移し、ココスプレートがカリブプレートの下に沈み込む中米のコスタリカで、スロー地震の一種である低周波微動とVLFEの検出および震源決定を行い、低周波微動とVLFEの活動の時空間的相関性を調べているほか、太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込んでいるニュージーランドでも予備的解析を進めている。 このように、特別研究員として採用された以後、日本周辺の沈み込み帯全域及び海外におけるスロー地震の検出を積極的に進めており、論文が1本受理され、1本投稿・査読中であるなど、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている解析である、中米コスタリカにおける低周波微動および超低周波地震(以下VLFE)の検出および震源決定を進め、低周波地震と超低周波地震の活動の時空間的相関性を調査する。また、ニュージーランドにおいては、スロー地震の一種である低周波微動やスロースリップイベント(以下SSE)は発見されているが、VLFEは発見されていないため、3次元速度構造モデルを用いた理論波形と、波形データとの間の相関係数を計算し、相関係数が高い時間でVLFEが発生したと判定するマッチドフィルター法を用いて、VLFEの検出を行う。また、ファンデフカプレートが北アメリカプレートの下に沈み込んでいるカスカディア沈み込み帯や、太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込んでいるアラスカ・アリューシャン地方でもVLFEや低周波微動の検出を試みる。また、VLFEによって解放されたモーメントの量と、SSEのすべり量の関係を調査し、これまでに検出したVLFEのカタログを使って、世界中のSSEのすべり量を調査する。 本研究で得られたスロー地震のカタログから、沈み込み帯ごとにスロー地震活動のの継続時間や発生間隔、震源の深さ、規模などの特徴を抽出し、それらを詳細に比較する。これらのスロー地震の特徴と、沈み込み帯のテクトニクスとの関連性を多面的に調査し、スロー地震の発生する環境やメカニズムについて考察する。 海外のスロー地震の調査には、海外の研究者との共同研究や議論が必要であるため、マサチューセッツ工科大学に滞在して、そこに赴任予定のWilliam Frank博士との共同研究を行うことを計画している。
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