本年度は、時間発展厳密対角化法を用いて、周期的外場印加下における光誘起相転移現象の理論的研究を展開した。 レーザーなどを利用した周期的外場により、平衡状態とは異なる性質を誘起し、動的に量子相を制御する試みが近年盛んに行われている。本研究では、基底状態において超伝導相と電荷密度波相が縮退することが知られており、超伝導相を議論することができる最も簡単な模型の一つである引力Hubbard模型に対して、Peierls位相を用いて周期的な外場を印加し、強結合領域における超伝導ペア相関関数及び電荷密度相関関数の光誘起ダイナミクスの理論的解析を行った。その結果、振幅が小さい領域では、周期的外場の振動数がクーロン相互作用よりも小さい場合には電荷密度波相関が増強され、振動数がクーロン相互作用よりも大きい場合には超伝導相関が外場の効果により増強されることを明らかにした。また振幅が大きな領域においては、周期的外場を印加した後においても基底状態の性質がより強く系の性質に影響を及ぼし、超伝導相関及び電荷密度波相関の増強・抑制の振動数依存性はより複雑化することを明らかにした。 このような周期的な外場が印加された系では、Floquet理論を用いて有効模型を導出することができる。得られた有効模型を用いて解析を行い、引力Hubbard模型の超伝導ペア相関関数及び電荷密度相関関数の光誘起ダイナミクスの性質を理論的に明らかにした。 また次近接ホッピングによりフラストレート効果が存在する異方的三角格子Hubbard模型に対して、周期的外場を印加し、基底状態で発現する120°秩序及びNeel秩序の相制御を議論した。外場の振動数がクーロン相互作用より大きな領域において、基底状態で発現する120°秩序(Neel秩序)からNeel秩序(120°秩序)に転移するパラメータ領域が存在することを明らかにした。
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