転写産物の大部分がタンパク質の情報を含まない非コードRNAと総称される転写産物であり、その機能について世界的に研究が進められている。当研究室では分裂酵母fbp1遺伝子座において、転写活性化に先立って、遺伝子上流非コード領域からの非コードRNA転写によってクロマチン再編成が誘導される機構を発見し(Hirota et al. Nature 2008)、mlonRNAと名付けその制御機構の研究を進めている。その研究過程でmlonRNAの転写必須エレメントを発見し(senmatsu et al. Sci. Rep. 2019)、mlon-boxと名付けた。本研究課題では、独自に特定したmlonRNAの転写必須エレメント(mlon-box)に結合するタンパク質を同定し、非コードRNA転写に共役したクロマチン再編成によるゲノム機能制御の分裂酵母ゲノム内における普遍性の検証を目的としている。 これまでの研究でmlonRNAの転写必須エレメントを発見し(senmatsu et al. Sci. Rep. 2019)、mlon-boxと名付けた。さらにmlon-boxが減数分裂期の染色体組換え反応を促進させることを報告してきた(Senmatsu et al. Commun. Biol. 2021)。昨年度には、fbp1領域のmlon-boxでは代謝ストレスを伴った減数分裂期に組換え頻度が上昇することをを予想させる結果を得た。本年度はこれを実証する実験を行い、mlonRNA転写によるクロマチン再編成の必要性やその他cis-elementを特定した。環境変化が減数分裂期組換え頻度に影響を与えることは古くから議論されてきたが、局所的な組換え頻度への影響や分子機構についてはあまり研究されておらず、RNAの新機能に関する研究に加え、ストレスと組換えの関係にも迫ることが期待できる研究結果である。
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