研究課題/領域番号 |
19J20799
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
大岩 真子 北見工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 界面 / 分離技術 / 捕捉 / 分解 / 低環境負荷 / 排水処理 |
研究実績の概要 |
これまでにオルガノクレー中の固液界面は界面活性剤により修飾され、疎水性が増大することが明らかになっており、農薬、医薬品類の捕集が疎水性相互作用によるものであることが示された。そこで、固液界面における官能基による分解への影響を調べた。層状粘土鉱物であるモンモリロナイトと界面活性剤から構成されているオルガノクレーは、界面に弱酸性のシラノール基を有している。この官能基の性質を、界面に強酸性のカルボキシル基を有するアクリル樹脂と比較することで検討した。その結果、オルガノクレー中でも分解が見られたペニシリンGは界面活性剤修飾アクリル樹脂でも分解促進作用が見られた。しかし、分解生成物には違いが見られた。この生成物については現在同定を試みている。また、後述するイプロジオンは、オルガノクレー中では分解が迅速に進行したが、界面活性剤修飾アクリル樹脂では分解の進行が遅かった。以上の結果から、界面官能基によって、分解過程が異なることが示唆された。中性の水溶液中でプロトンが解離しやすい強酸性のカルボキシル基よりも弱酸性でプロトンの解離が少ないシラノール基がより強力なブレンステッド酸として働き、加水分解を促進したことが原因と考えられる。また、分解における界面活性剤の役割が界面近傍に薬物を引き付け、界面官能基との距離を近づけることと示唆された。 オルガノクレーによる捕集・分解可能薬物の探索の結果、難分解性の農薬、イプロジオンがオルガノクレー中で分解されることを見出した。イプロジオン中のヒダントイン構造がオルガノクレーの触媒作用により加水分解されると考えられる。一方、同じヒダントイン構造を有する難分解性のフェニトインでは分解が見られなかった。イプロジオン中ヒダントイン骨格のアミンが第三級アミンであるのに対し、フェニトイン中ヒダントイン骨格のアミンが第二級アミンとなっていることが原因として考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症のため予定していた界面物性などを調べることができなかったが、固液界面上官能基と捕捉薬物の分解促進作用の関係やオルガノクレーによる触媒作用を受ける物質を見出し、薬物構造と触媒作用の影響を調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
固液界面において、捕集の要因としての界面活性剤の役割や分解の要因としての界面官能基の役割を明らかにし、より適用範囲の広い捕集・分解機能を有する媒体を開発する。また、気液界面への薬物や色素の捕捉やフローテーションによる水中薬物や色素の除去に関する経験式を統計的解析手法により作成し、除去に係るパラメーターを明らかにすることを試みる。また、骨格構造が同じものの、固液界面における分解促進作用を受ける物質および受けない物質の構造と物性の差異から分解に必要な要因を検討し、分解促進作用の適用性を拡大させることが可能な界面修飾を施すことを試みる。検討の結果から、分解触媒としての汎用性を広げたオルガノクレーなどの固液界面修飾材料を開発する。
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