トポロジカル相において、その相がギャップを持つ境界を持つことが可能か否かを問うことは重要である。例えば空間2次元における量子ホール系では、electric Hall conductivityが非ゼロであればその境界にギャップレスな境界が出現する。加えて、一般にトポロジカル相の chiral central chargeが非ゼロならば、その境界は大域的対称性の有無に関わらず必ずギャップレスである。私は、2次元トポロジカル秩序相の代数的記述に基づき、一般の大域的対称性を持つトポロジカル相における境界が、対称性を保つgapped相によって実現されるための必要条件を代数的に与えた。また、フェルミオンが存在する系においても、理論の境界がギャップをもつ条件を代数的に書き下した。以上の一般論に基づき、特にU(1)対称性をもつトポロジカル秩序相に関して、対称性を保つgappedな境界が実現できるための必要条件を、容易に計算可能な公式に基づいて提案した。特に、U(1)対称性を持つフェルミオン系においては、chiral central chargeとelectric Hall conductivityがゼロであることに加え、それらの物理量を一般化した”higher”な量が存在することを発見し、その量がゼロであることが、対称性を保つgappedな境界を持つために必要であることを示した。このhigherな物理量が、トポロジカル秩序相を特徴づけるエニオンの統計的性質を用いて容易に計算できることを明らかにした。トポロジカル秩序相は本研究の主たるテーマである、高次形式対称性をもつ最も典型的なトポロジカル相である。上記の結果は、トポロジカル秩序相が境界を持つときに、その基底状態をqubitとして利用できるか否かに関する一般的な条件を与えるものであり、意義深い結果である。
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