研究課題/領域番号 |
19J20902
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
矢野 康介 立教大学, コミュニティ福祉学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 感覚処理感受性 / 環境感受性 / Highly Sensitive Person / 大学生 / 抑うつ傾向 / 精神的健康 / 健康教育 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては,本研究課題の「大学生における抑うつ傾向の低減に対して,感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)の程度に応じた健康教育を行うための知見を得る」という目的に沿って,以下に示す2件の研究を行った。 第一に,SPSの測定尺度であるHighly Sensitive Person Scale 日本版(HSPS-J19)が,健康教育の現場での使用に耐えうる心理測定的性質を備えているか検討することを目的として,全国の日本人青年・成人1,626名にweb調査を行った。HSPS-J19を構成する各項目の特性についてRaschモデルに基づく分析を行ったところ,ほとんどすべての項目は,SPSの程度を識別可能な性質を有していることが示された。 第二に,抑うつ傾向の低減に関連を持つ要因が,SPSが高い個人と低い個人で異なるか否かについての詳細な知見を得るため,日常生活で直面する困難への対処に必要とされるライフスキルと抑うつ傾向の関連に対するSPSの調整効果を検討した。上記の研究で使用した調査対象者のうち,大学生868名を分析対象とした。抑うつ傾向を目的変数,SPSとライフスキルの各下位尺度(意思決定スキル,対人関係スキル,効果的コミュニケーションスキル,情動対処スキル),およびこれらの交互作用項を説明変数とした階層的重回帰分析,ならびに単純傾斜分析を実施した。分析の結果,SPSが高い場合には情動対処スキルが,SPSが低い場合には意思決定スキルが,さらにSPSの程度に関わらず対人関係スキルが,抑うつ傾向と有意な負の関連を持つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は,上記のような研究業績に加えて,筆頭著者を務めた1件の論文が国際的な学術雑誌に採択および掲載され,国内外の学会大会において計5件のポスター発表を行うなど,着実に知見を積み重ねてきた。したがって,令和2年度以降の研究活動では,これらの知見を基盤としつつ,本研究課題の目的に沿った検討をさらに進めて行くことができると考えられる。そこで,令和元年度の研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況を踏まえ,令和2年度は,以下に示す2件の研究を計画している。第一に,全国の日本人大学生を対象としたデータから,SPSの程度に基づいた大学生の類型化を試みる。これまでに,大学生を対象とした健康教育においては,対象となる学生を一定の特徴に基づいていくつかの群に分類し,各群の特徴に応じた教育を実施する重要性が指摘されている。したがって,本研究の成果は,後続の研究に対して重要な示唆をもたらすことが期待される。第二に,一つ目の研究で特定された各群における,ストレス体験時の心理的特徴の抽出を試みる。具体的には,大学生を対象に自由記述調査を実施し,ストレス体験時の認知や対処方略について回答を求める。群ごとにテキストマイニングによる分析を行うことで,SPSの程度に基づく各群において,抑うつ傾向が高まる機序に関する示唆を得ることが期待される。 最終年度(令和3年度)では,これらの知見を踏まえて,大学生を対象とした縦断的調査の実施を計画している。これにより,令和2年度の研究で特定された各群における抑うつ傾向の関連要因について,より詳細な知見を提供できるものと考えられる。
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