研究実績の概要 |
本研究課題では,感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity;以下,SPSと略記)の個人差に注目し,抑うつ傾向の低減に向けた健康教育を行うための基礎的知見を提供することを目的としている。令和2年度は,前年度までの進捗や国外の研究動向を踏まえ,以下に示す2件の研究を行った。 第一に,「個々人はSPSの程度に応じて3つの群(SPS低群・中群・高群)のいずれかに属する」ことを示唆した国外の知見が(e.g., Lionetti et al., 2018),日本人大学生においても再現されるかどうかを検討した。全国の大学生に横断的質問紙調査を行い(N = 1,977),SPSの程度を測定した。潜在クラス分析を行ったところ,3つの群を想定したモデルが支持された。また,対象者の基本属性(性別,年齢)を統制したうえで各群におけるSPSの程度を比較したところ,すべての群間に有意な差が示されたため,各群はSPS高群,SPS中群,SPS低群と解釈された。したがって,日本人大学生を対象とした場合でも,国外の知見が再現された。 第二に,上記3つの群において,抑うつ傾向の低減に対して効果的なストレス対処方略を検討するため,全国の大学生692名に自由記述調査を行った。得られたデータについて,共起ネットワーク分析を行ったところ,SPS低群では【情動制御】【友人への情緒的・道具的サポート希求】,中群では【前向きな思考】【友人への道具的サポート希求】,高群では【前向きな思考】【感情の表出】【情動制御】【情緒的サポート希求】といった方略が,それぞれ抑うつ傾向の低減に有効であることが示唆された。
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