研究課題
風洞実験では風波の発生,成長過程における海面温度分布,水面形,波浪下の流速分布に対する赤外線計測,LIF,PIV同時計測から,風波発達過程における熱輸送機構を調査し,次のことが明らかとなった.吹送初期においては表面張力波の発生に伴う海面抵抗の攪乱が生じると海面上に発達した交互交代渦による収縮発散流が熱境界層厚を変動させ大気から海洋への熱伝導を局所的に促進させる.平衡風波下ではマイクロ砕波による表面更新が熱輸送を支配し,表面張力波に発達する熱い渦層を経由して高温の海面を次々と海中に輸送する.また,はく離を伴う波浪上流れ場に対して高速画像解析を行い,風洞実験を再現する条件下での数値実験結果と相互検証できる準備が整った.数値実験では前年度までに風速,波形勾配,波動流速をパラメータとした波浪上に形成される乱流境界層の発達に伴う波面に作用する抵抗を数値的に求めることで,風速に応じて波浪形状に依存した独特な渦構造が海面抵抗の増減を規定すること,波形勾配,波動流速の違いに依っても流れ場,海面抵抗に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった.本年度はこれらの結果を踏まえ更なる調査として,新たなパラメータとして波浪スケールを加え,海面抵抗のスケール依存性の調査を行った.
3: やや遅れている
新型コロナウイルスに伴う問題により風洞実験の遂行に遅れが生じている.
数値実験では既に開発済みである3次元大気乱流数値モデルに気相流れ場と飛沫粒子運動の流体粒子間相互作用のカップリングを可能とする粒子・乱流two-wayモデルの導入を目指す.このモデルの導入により砕波に伴う飛沫混入流れを数値的に再現することが可能となり,強風下の気液混相化に伴う運動量交換・海面抵抗変調の要因として予測される飛沫混入による波浪状組織的渦構造の崩壊・形成,及び飛沫群の抗力の効果を数値的に明らかにする.風洞実験では,様々な風速下で発達する波浪上の気流構造に対して高速画像解析を引き続き行い,数値実験結果と比較することで,水位変動による気流構造の変化,及びその海面抵抗への寄与について調査する.新型コロナウイルスに伴う問題により風洞実験の遂行が制限される可能性があるが,当初予定していた研究計画を臨機応変に修正し,数値実験を優先して行うことで遅れを最小限に止める.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. B2 (Coastal Engineering)
巻: 75 ページ: I_49~I_54
10.2208/kaigan.75.I_49