研究課題/領域番号 |
19J20932
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 駿介 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 苦味受容体 / TAS2R / 体内組織 |
研究実績の概要 |
今年度は、食品由来の苦味成分のリガンド特性を評価するため、評価系の構築を行った。T2Rに作用するリガンドを解析する系としては、T2RとGタンパク質を共発現させた培養細胞を用い、リガンド化合物を投与した時の細胞内のカルシウム動態を測定することでT2Rの活性化を検出する方法が報告されている。そこで、報告されている文献を基に、評価系の構築を目指した。はじめに、Gタンパク質をコードする配列を哺乳動物細胞用ベクターであるpcDNA3.1(+)に組み込んだものをHEK293T細胞に導入し、シングルセル由来のコロニーを単離することで、Gタンパク質を恒常発現する株を得た。次に、各T2Rをコードする配列をpcDNA3.1(+)にサブクローニングすることでT2R発現ベクターを構築した。構築したベクターによるT2Rの一過性発現を試みたが、T2R126を除いてタンパク発現が確認できなかった。この問題に対し、他ベクターへの変更、またはコドンの最適化により対処しようと試みたが、改善できなかった。この原因は明らかでないが、今後の解析試験により、T2R126と代謝機能との関わりが示唆された場合においては、T2R126のリガンド特性を解析する予定である。 また、昨年度行ったマウス組織でのT2R発現解析の結果、発現パターンに個体差が見られたが、寄生虫刺激によってマウス腸管タフト細胞においてT2R発現が変化したという報告や、ヒトにおいて喫煙習慣によりT2R発現量が異なるといった報告から、苦味成分がT2Rの発現に影響しているのではないかと仮定し、苦味成分を3T3-L1細胞に添加して刺激した際のT2RのmRNA発現を解析した。その結果、キニーネやサリチル酸などの苦味成分の投与が、3T3-L1のT2R発現プロファイルを変化させている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂肪細胞や骨格筋などの組織に発現するT2Rに対応するリガンド探索を目的とした評価系の構築において、一部の受容体での評価系の構築には成功したが、複数種類存在するその他の受容体での評価系の構築が順調に進まず、プラスミドベクターの変更、コドン最適化、タグの付け替えなど様々な条件検討を行う必要があった。 また、脂肪細胞や骨格筋のモデル細胞である3T3-L1やC2C12細胞に苦味成分を投与した際の代謝関連遺伝子への影響に加え、T2R遺伝子の発現変動も併せて解析を行う方針に変更し、それらの実験の予備実験を行う必要があった。上述のような理由から、本来の予定よりも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス体内組織及び細胞株を用いた遺伝子発現解析により発現が確認されたT2Rを解析対象として、脂肪細胞モデルである3T3-L1や骨格筋モデルであるC2C12細胞にリガンドである苦味成分を投与した際のT2R発現レベルや代謝関連遺伝子に与える影響を解析する。また、in vivoにおいても同様の検証を行うため、C57BL/6Jマウスに苦味成分を与えたときの体内組織のT2Rや代謝関連遺伝子の発現解析を行う。苦味成分投与により代謝機能に変化が見られた場合に、T2Rとの関わりを調べるため、PITCh法を用いたT2R遺伝子ノックアウト及び過剰発現を行い、報告されているリガンド化合物を投与した際の細胞機能(脂肪細胞の分化や脂肪合成・脂肪分解など)に与える影響を解析する。
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