研究実績の概要 |
本研究では、高効率を誇る多接合太陽電池の汎用性を高めるため、基板に用いる単結晶Geウェハをプラスチック上のGe薄膜に代替することを目的とする。本年度は、当研究室における「固相成長による絶縁体上Ge薄膜合成技術」を下記①~③のように展開した。 ①今回、簡便なドーピング手法である「拡散塗布法」に着目した。複数のP/N型ドーパント(P型: B,Al,Ga /N型: P,As,Sb)を採用し、当研究室で合成した固相成長Ge薄膜にSpin-on-glass法による熱拡散を行った。その結果N型で2桁、P型で3桁の密度変調に成功した。特に、Pを拡散塗布に用いた場合、低温プロセス(< 550 °C)でありながら、高い電気的特性(電子移動度 200 cm2/Vs、電子密度 1E19 cm-3)を達成した。 ②多結晶Geにおける歪を調査した。Geと熱膨脹係数の異なる基板を選定し、界面の影響を除去するためにGeO2下地を挿入した後、固相成長を行った。その結果、多結晶Ge薄膜中の歪が2要因で印加されることを明らかにした。また、圧縮歪をGe薄膜に導入した際、より低い粒界障壁を示すことを発見した。 ③Ge薄膜での分光感度取得を目指し、太陽電池デバイスを試作した。第一に、当初計画していたエピタキシャル法でP/N接合の形成を検討したが、光応答は無かった。したがって、別アプローチとしてP/N各層の物理的連続性をGeO2層挿入により断つことを検討した。シミュレーションにより、デバイス動作に影響を与えないGeO2膜厚を有しながら、空乏化可能な条件を探索した。その結果、多結晶Ge薄膜において初となる分光感度を実証した。 以上、高度化した固相成長Ge薄膜を元に、①伝導型変調、②物理探索、③実デバイス作製を行った。これらの成果は、フレキシブルGeを用いた革新的太陽電池の実現に大きく貢献するものである。
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