本年度は、脊髄ノルアドレナリン(NA)が濃度依存的に痛覚を促進と抑制の両方向に制御すること、その作用には脊髄アストロサイトサブセット(Hes5陽性)や神経細胞の異なるアドレナリン受容体が関与することを明らかにした。具体的には、低濃度NAはHes5陽性アストロサイトのα1A受容体へ作用することでD-serineシグナルおよびアデノシンシグナルを誘発する結果、機械性痛覚過敏が生じること、高濃度NAはアストロサイトのβ受容体および神経細胞のα1A受容体を介して痛覚伝達を抑制することを行動薬理学、イメージング等の実験により明らかにした。さらに、拘束ストレスモデルを用いた実験により、ストレス急性期に生じる痛覚伝達の抑制には、アストロサイトのβ受容体および神経細胞のα1A受容体が、一方で、慢性期に生じる痛覚過敏にはHes5陽性アストロサイトのα1A受容体シグナルが重要であることを示し、脊髄NAによる痛覚調節メカニズムの生理学的役割の一端を解明した。本研究成果の一部は国際科学誌に2報発表した。また、残部については現在投稿準備中である。
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