前年度まで、本研究ではヒュームの理論哲学に見られる議論の一部が暴露論証として再構成できるという洞察をもとに、暴露論証を理論的に裏付ける認識的正当化に関する外在主義、特に信頼性主義と阻却事由の関係について研究し、その一部を学会で発表した。この発表をもとにした論文は2022年度刊行の『哲学雑誌』に掲載された。 2022年度にはまず、予定していた通り日本哲学会第81回大会において信頼性主義と阻却事由をめぐるさらに詳細な論点に関する研究発表を行った。この成果はReview of Analytic Philosophy誌にて論文として公表した。加えて、こうした研究を通して得られた知見に基づきつつ、証言の認識論に関する哲発表を国際ワークショップを含め数回にわたって行った。この成果は翌2023年度にEpisteme誌に掲載された。研究を進める中で、社会的存在論・社会的認識論に関してさらなる調査が必要であることが判明したため、翌年度への繰越を行った。 2023年度には、追加の調査も踏まえ、対話型AIをはじめ自然言語を出力する人工物から得られる知識について信頼性主義の立場から研究を行い、ソウルで開催された国際ワークショップで発表した。この発表では、人工物の出力をもとに信念を形成する受け手の態度が人工物に由来する知識の成否を左右する点を強調した。この成果はTechne: Research in Philosophy and Technology誌への採録が決定している。そのほか、2020年度の日本科学哲学会第53回大会での発表「プロセス信頼性主義は集団の信念の正当化をどのように説明すべきか」の論文化に向けた社会的存在論・社会的認識論に関する文献調査に加え、現代認識論に関するこれまでの研究をヒューム研究と接続するための調査も行った。これらの成果も近年中に論文として公開することを目指している。
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