研究課題/領域番号 |
19J21116
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
双 逸 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 窒素ドープ / Cr2Ge2Te6 / 相変化材料 / 相変化メモリ / 界面伝導機構 / 局所構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、新規相変化材料:Cr2Ge2Te6 (CrGT)のアモルファス相の耐熱性を向上するため、CrGTの結晶化温度(Tx)に及ぼす窒素(N)ドープの影響について取り組んだ。NドープによるTxの上昇はGSTについてもその有効性が報告されており、期待通りNドープ型CrGT(NCrGT)は高いTxを実現する事が分かったが、室温でのアモルファス相と結晶相の間に膜(バルク)抵抗率ρの変化はほぼ存在しないことも分かった。しかし、NCrGT/金属電極間の接触抵抗率ρcを測定した結果、アモルファス相と結晶相には三桁の差が生じる事を見出した。このことは、例え、相変化に伴う抵抗率変化が無くても、相変化に伴って“電極界面伝導機構”に変化が生じればPCMとして利用できる事を示唆する。そこで本年度では、ラマン分光測定、硬X線光電子分光(HAXPES)法や広域X線吸収微細構造(EXAFS)法と第一原理計算を組み合わせて、NCrGTのバルク・界面伝導特性と相変化機構の解明を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、NCrGTの相転移現象について、特に、界面伝導特性とその相変化メカニズムについて、種々の実験的手法を用いて調査した。主要な結果は次の通りである。 (1)ドープした窒素の化学結合状態や窒素周りの局所構造の変化が界面伝導特性変化の主役を担っている事を明らかにし、筆頭著者として国際論文を発表した。 (2)NCrGTの両相の電気伝導の温度依存性を調査し、その電気伝導機構を解析した。その結果、アモルファス相ではバンド伝導である一方で、結晶相ではホッピング伝導が生じている事を突き止めた。これに関連した成果を筆頭著者として2報の国際論文として発表した。 以上の結果は、窒素ドーパントにより、その相変化メカニズムや界面伝導特性を制御できる事を示唆しており、次世代の相変化材料の開発指針としても極めて重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
窒素ドープCr2Ge2Te6(NCrGT)メモリデバイスの改善と評価:これまでの研究では、Ge2Sb2Te5(GST)素子と比してNCrGTの動作電圧が非常に低いことも分かった。この事は、接触抵抗支配のため電極界面近傍の極微小領域が相変化するだけで大きな抵抗変化が得られた。しかし、繰り返し書き換え性能が数十回しか得られない。この結果を基に、NCrGTメモリデバイス繰り返し書き換え性能向上を目指す。まず、性能劣化の原因を調査する。具体的には、劣化したデバイスの断面を透過電子顕微鏡で観察して、相変化領域で原子移動や相分離が発生していないか確認する。劣化の原因を分かってから、デバイスの構造の改善、例えば、NCrGT層の厚さと電極の種類の選定を行う。加えで、電気パルスの形と印加方法を調整し、優れた繰り返し性能実現に向けた調査を行う。
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