研究課題/領域番号 |
19J21191
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
辛嶋 了憲 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ドイツ憲法 / 平等原則 / 違憲審査基準 / 連邦憲法裁判所 / 一般的平等原則 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、平等原則に関するドイツ連邦憲法裁判所及び学説の分析によって、ドイツにおける平等原則の審査基準の内容・特徴を明らかにすることである。この分析を通して、平等原則審査基準の在り方を明らかにする。上記目的の達成のため、2019年度は、研究実施計画に基づき、以下のように研究①・②を遂行した。 【年度前半】①ドイツの基本法3条1項について、連邦憲法裁判所の判例法理を分析した。具体的には連邦憲法裁判所第一法廷の平等原則の審査基準の変遷、背景、及びその都度の審査基準の特徴について分析した(a)。日本における先行研究によって、連邦憲法裁判所第一法廷の特徴は既に指摘・分析されていたが、第二法廷の平等審査を詳細に検討する文献はあまり存在しない。本研究では、(a)と並行して第二法廷の平等審査についても同様に分析した(b)。(a)、(b)の分析を踏まえて、本研究は、人的要素、その時々の学説状況、第一法廷と第二法廷の相互作用などに着目し、網羅的に分析を行った。この分析を踏まえ、連邦憲法裁判所の平等審査手法と、日本の最高裁判所の平等審査手法を比較しつつ、連邦憲法裁判所の平等審査の日本の判例法理への導入可能性・有益性を明らかにした。 【年度後半】研究①の成果として論文を作成し、辛嶋了憲「連邦憲法裁判所における一般的平等原則審査の変遷」一橋法学18巻3号(2019年11月)395~463頁[査読有り]を公表した。 ②基本法3条1項について、ドイツの学説上の審査モデルを分析した。ドイツには、連邦憲法裁判所の判例法理とは異なる、様々な審査モデルが存在する。本研究は、近年の審査モデルを広く概観し、主要な審査モデルを分析した。近々、②の研究成果を論文として公表する。 ①・②の研究遂行のために、マインツ大学、フランクフルト大学を訪問した。現地での資料収集や大学教授との意見交換などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では、研究実施計画に基づき、以下のように研究を行った。 【年度前半】①ドイツの連邦憲法裁判所の平等審査の変遷を明らかにして、その都度の平等審査の特徴を分析した。第一法廷の平等審査の変遷のみならず、第二法廷の平等審査の変遷・特徴を明らかにした。その上で、両法廷を比較し、相互作用を検討した。一連の分析によって、近年の連邦憲法裁判所の判例法理を網羅的に分析することができた。 【年度後半】①の分析を継続し、研究成果として論文を作成し、公表した。②ドイツの学説上の議論を概観して、主要な学説上の平等審査モデルの分析を行った。 2019年度は、①・②の分析により、近年のドイツの平等原則論について、判例の平等審査(実務)と学説の審査モデル(理論)の両方を網羅的に研究することができた。また、研究①については、2019年度後半に、研究成果として、辛嶋了憲「連邦憲法裁判所における一般的平等原則審査の変遷」一橋法学18巻3号(2019年11月)395~463頁[査読有り]を公表することができた。②の研究成果についても、2020年度に論文として公表する予定である。また、本研究課題の遂行をより充実なものにするために、マインツ大学、フランクフルト大学を訪問した。資料収集を行い、大学教授とドイツの平等原則論、日本の平等原則論について、意見交換をすることができた。 以上より、2019年度の研究はおおむね順調に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は以下のように研究を行う計画である。 【年度前半】①2019年度の年度後半に行ったドイツの学説上の平等原則の審査モデルの研究を継続し、論文として公表する。②2019年度の研究はいずれも主に近年の判例や学説上の議論を取り扱った。2019年度の年度前半に行った判例法理の分析は1951年から現在までの連邦憲法裁判所の展開を概観したものである。また、年度後半に行った学説の分析も、1980年以降の学説に焦点を絞っている。1951年以前のドイツにおける平等原則に関する議論の分析が欠けており、また、連邦憲法裁判所の最初の平等審査基準である「恣意禁止原則」に関する学説上の分析も不十分なままである。本研究はドイツの平等原則の包括的な分析を目的の一つとしている。この目的の達成のためには、ドイツ平等原則論の歴史的展開の考察は不可欠である。そのため、1951年以前のドイツの平等原則に関する議論を分析する。 【年度後半】②の研究の成果を論文、あるいは、口頭発表という形式で公表する。③一般的平等原則は様々な法領域で問題になる。あるいは、他の基本権で問題になる。2019年度の研究では、一般的平等原則の審査基準の変遷の分析に留まっていたため、特定の法領域における平等審査の手法や、法領域間の審査手法の相違などには踏み込めなかった。そのため、2019年度の研究を踏まえ、ある特定の法領域における平等審査の手法に着目して、一般的平等原則審査基準の研究をより深いものにする。 上記のように、2020年度は、前年2019年度に継続して、ドイツの平等原則論について、更に網羅的かつ詳細な分析を試みる。①~③の分析の他にも、適宜平等原則における他の論点についても分析を行う。一連の分析を通して、ドイツの平等原則論の体系的な研究を目指し、日本においてあるべき平等原則審査基準の在り方、あるいは、平等原則の考え方を追求する。
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